日本株は悪材料への耐性を強めた

「気になるのは欧州発ロシア絡み事案」
 まだアメリカの利上げ局面は続くと見ている。足元、原油価格に落ち着きが見られることから、インフレを抑え込むための金融引き締めは次第にブレーキが踏まれるだろう。それでも米政策金利は3.75~4.00%を見ておきたい。米経済は減速、住宅市場も調整局面入りすると見られる。半面、雇用や所得環境は堅調に推移、米企業は健全なバランスシートを継続、個人消費が景気を下支えするイメージを持っている。一方向から見れば「悪い」となり、別の方向から見ると「それほど悪くない」という決定打に欠ける状況が継続するのではないだろうか。日本株にとって、米国株の動向は好悪両面の要因となる…つまり、ここ最近の動きとそう変化がないということになる。その中で、昨年末→7月22日時点で、世界の株価指数の動きは以下となっている。

(米国)NYダウ-12.2%、米S&P500種指数-16.9%

(欧州)独DAX指数-16.6%、仏CAC40指数-13.1%

(アジア)香港ハンセン指数-11.9%、上海総合指数-10.2%、台湾加権指数-18.0%

(日本)日経平均-3.1%、TOPIX-1.5%

 日本の株価指数の底堅さが顕著だ。先月の当欄でも「日本株はベア(弱気)相場入りしたわけではない」と強調したが、その見方は正しかったのだろう。日経平均が1,000円程度下げると急に投資家の投資意欲が減退し、市場には弱気意見が台頭する。しかし、複数の局面を跳ね返して日経平均は現行水準に位置している。本年の株式市場の波乱要因となっていた米利上げが数度行われ、まだ打ち止めにはならないものの、日本株には耐性が充分にあると見ていいだろう。米経済にしても減速がそのまま「不況入り」を意味するわけではない。それ以上に、欧州(ユーロ圏)が危惧される。ECB(欧州中央銀行)は少なくとも今年末まで利上げを継続すると見られ、やはり同地域の2023年の景気を下押しするだろう。そして、それ以上に「ロシア」という不確定要因が重石となる可能性が高い。欧州主要国へのロシアからのガス供給がとくに気にされる。「ノルドストリーム1」のガス流量は定期点検の終了に伴い回復したが、プーチン大統領が7月末以降に再びガスの流量が減少する可能性について言及するなど、先行きは不透明だ。主要国はLNG輸入の拡大やノルウェーからの天然ガスを確保しているものの、ロシア産ガスの供給懸念から欧州での天然ガス価格は高止まりしている。この先の世界株の足を引っ張ることが起きるとすると、米国ではなく「欧州発ロシア絡み」ではないかと見ている。

「驚くほどコロナ感染第7波に反応しない日本株」
国内ではコロナ感染拡大第7波入りしている。日々の感染者は過去最高を更新した。ただ、今のところ重症者が過去の感染拡大局面よりも少ないため、政府は「行動制限(まん防、緊急事態宣言)はしない方針」と強調している。主要自治体の首長も同様の見方を発しており、過去のように自治体が政府に行動制限を要請する事態には陥っていない。コロナ感染拡大による行動制限は感染者数の増加によって取られるものではなく、医療体制の維持のためにされるものという理解はすでに国民の間にあるだろう。各々感染対策を講じることになるものの、かつてのように百貨店や外食店が休業となり、繁華街から人が消えるようなことにはならず、消費の腰折れ可能性は低い。ここまで比較的堅調に推移してきた「消費関連株」に引き続き注目、押し目があれば好都合となりそうだ。

【消費関連株】

イオン(8267・プライム) 

・ABCマート(2670・プライム) 

・しまむら(8227・プライム) 

・ゼンショーホールディングス(7550・プライム) 

・コロワイド(7616・プライム) 

 7月25日、「サル痘」の感染者1人が国内で初めて確認された(欧州への渡航歴のある東京都内の30代の男性)。サル痘は天然痘に似た感染症で、発熱・頭痛・リンパ節腫脹などの症状がある。欧州、北米、中南米、中東、アジア、オセアニアに至る世界各地で感染者が増え、7月22日までに感染者は世界で1万6,000人を超えているとのことだ。これまでの例では主に男性間の性的接触で感染するとされており、WHO(世界保健機関)はサル痘を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当する宣言を出している。多くの場合2-4週間で自然軽快し、予防については天然痘ワクチンによって約85%の発症予防効果があり(厚労省/1975年までは全員接種)、日本において感染が爆発的に拡大する可能性は低いとされるが、コロナ感染拡大期でもあり、「また新たな感染症が上陸したのか」と不安視されているものではある。株式市場で「サル痘関連株」と想定されるのは、国内で天然痘ワクチンを製造するKMバイオロジクス(熊本市)を傘下にもつ「明治ホールディングス(2269・プライム)」が筆頭だろう。このほかではPCR検査に関連する銘柄「H.U.グループホールディングス(4544・プライム)」、「ビー・エム・エル(4694・プライム)」、「栄研化学(4549・プライム)」、さらには衛生具の「オカモト(5122・プライム)」、「不二ラテックス(5199・スタンダード)」なども指摘できる。国内で感染者が確認された翌日(7月26日)には不二ラテックス株がストップ高まで買われており、株式市場も「サル痘」に関心を持っていることになる。

【サル痘関連株】

明治ホールディングス(2269・プライム)

・H.U.グループホールディングス(4544・プライム)

・ビー・エム・エル(4694・プライム)

・栄研化学(4549・プライム)

・オカモト(5122・プライム)

・不二ラテックス(5199・スタンダード)

株式ジャーナリスト 天海源一郎

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。