米国初の金融引き締め、ウクライナ戦争、原油高を背景とした世界的な物価高など、挙げればキリがないほど不安材料が、現在の株式市場にはあります。
このような中、2021年3月末をもって積極的なETF買入を自制していた日本銀行ですが、不安材料から株価が大きく下落する局面が増え始めた足元、再びETFを買い始めているようです。
下の図1をご覧ください。
こちらは、2010年からの日本銀行によるETF買入の推移を、買入残高(簿価ベース)とTOPIXと共にプロットしたものになります。赤線は買入れた日の引値を基準に買入平均単価を計算したものになります。

黒の点線で囲った部分に注目してください。2021年4月以降パタッとETF買入が止まっていることが分かります。(買入残高を表す棒グラフに隙間が空いている=ETF買入が無いということを意味します。)
この間、幸いにして株価は高値圏を維持できました。従って日本銀行もETFを買う必要がなかったのですが、今年に入り、様相が変わってきているようです。
2021年3月以前ほどではありませんが、再び日本銀行がETF買入を行っていることがお分かりになるかと思います。
ここで併せてみていただきたいのがTOPIXの動きです。2022年が始まってから、今まで高値圏を維持し続けていたTOPIXが、冒頭申し上げた不安材料を背景に下落し始めてきています。そのため日本銀行も再び買い始めたものと予想されます。
果たして今後も買い続けるのか?
日銀パワー不在の中、遅ればせながらジリ貧になり始めた株式市場ですが、今後日本銀行は2021年3月以前の買入ペースに戻すのでしょうか?
それを判断する上で、重要なポイントとなってくるのが、日銀が既に保有しているETFポジションの評価損益率になります。何故ならば、ETF買入政策は黒田総裁肝いりの政策であり、金融政策の一環とはいえ何としても損失は避けたいというのが本音であり、もし損益分岐点を割るようなことがあれば日本銀行として、なりふり構わずETF買入を行ってくる可能性が高いからです。
そこで下の図2をご覧ください。
こちらは、日銀がETF買入を全て当日引値で行っていたならばという前提に立って、その時点での想定評価損益率を記録し、その推移をTOPIXと共にグラフにしたものです。

黒色の点線で囲った部分がETF買入を事実上一旦中断した時期になります。(正確に言えば、全く買わなかったわけではないので、買入のペースを著しく鈍化させた時期という言い方が正しいことになります。)
如何でしょうか?
どうやら日本銀行は損益率が20%を割り込むようなことがあれば、積極的にETF買入を再開してくるのではないか?という推論が成り立ちます。
とはいえ、上昇し続ける日銀の保有割合!
足元の水準から更に下落するようであれば積極的に買いたい日本銀行ですが、気になるのが保有割合です。
下の図3をご覧ください。
こちらは、日本銀行のETF保有割合を時価ベースで値洗いした上で東証の時価総額に対するウェイト(%)を計算し、グラフにしたものになります。(引値で買入れたという前提で計算しているため、あくまでも想定ベースになります。)

昨年4月以降、買入額を極端に減らした影響で、足元では保有割合の上昇スピードは鈍化していますが、6%半ばまで上昇してきているのが現実です。
今後の見通しは?
私見にはなりますが、保有割合が10%に到達するまでは、世論からの批判も含めて、ETF買入政策を続けることが可能かと考えております。従って、東証の時価総額が約700兆円だと仮定した場合、25兆円程度は未だ買入する余地があると考えております。
そのカードを日銀はいつきるのか?
黒田総裁の任期の問題もありますから、枠を使い切らずに次期総裁の元、ETF買入政策が終了となる落ちもあり得ます。そしてそれが一番株式市場にとってリスクとなるでしょう。
今のところ、公にはETF買入の中止をうたってはいませんので、未だ買い入れる余地は残っているとはいえ、早晩行き詰まる政策であることは事実です。そうなった時に、買入政策の中止が正式に発表されるならまだしも、万一売却していく方針などが出ようものなら、世界の投資家から日本の株式市場は格好の売り対象になってしまうことでしょう。
今後の戦略は?
まずは短い目線で考えると、もし足元の水準より相場が一段安となるならば、前述のように日銀は再度ETFを買入れてくることが考えられます。従って、短期的には下がったら買い、ということで正しいでしょう。その場合は、eワラントコールで短期的なリバウンドを狙っていくのが得策でしょう。
一方、半年~1年のスパンで相場を見た時は、次期日銀総裁の行方が重要なキーワードになってくるでしょう。
黒田総裁の再任は、年齢的にも確率が低いと思われますから、新しい総裁が任命される確率が高いでしょう。
もし、世界の金融引き締めの流れに同調するような主義主張を持った方が、総裁になった場合は要注意でしょう。
その場合は、全力でeワラントプットを購入することをお勧めいたします。
(カイカ証券)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。