日米決算発表前の静けさ

今年に入ってから米国株式市場においてその動揺度を高めたものとしては、1月の「ロビンフッダーズ騒動」、2月の「米国長期金利上昇傾向鮮明化」、そして3月の通常は一族の資産管理を行うファミリーオフィス系ファンドのアルケゴスの実質破綻によって、そのプライムブローカー業務を行っていた複数の証券会社が合計で100億ドル程度の損害を受けたと推定されている「アルゲゴス騒動」が挙げられるが、4月に入ると市場は落ち着きを取り戻すとともに、ボラティリティと売買代金が著しく低下している。

このボラティリティを恐怖指数ことVIXの月別終値平均値の推移で示すと、1月が24.9、2月が23.1、3月が21.8と低下し続け、4月は先週金曜日(4月16日)まで4日連続でコロナショック以前の昨年2月以来となる16台を記録しており、その終値平均値は17.1にまで低下している。

この市場動揺度を日中の値幅という観点から見てみたい。
私は「(日中高値―日中安値)/前日終値」を「値幅率」と呼んでいるが、このダウの値幅率の直近25営業日合計について、直近5営業日を2倍のウエイトにしたものが下のグラフである。

このグラフは上に行けば行くほど市場の日中ボラティリティが高くなっていることを示しているが、直近それが大きく下落し、コロナショック後の最低値になっていることが分かる。市場はこのように日中値幅の観点からも非常に落ち着いているのだ。

この落ち着きは、日米ともに決算発表前であったことが招いたと考えることもできる。
先週半ばより米国の決算発表がスタートしたが、ここ1ヶ月ほど、外国人投資家と情報交換をしていて、彼らが日本の3月決算企業の2021年度の業績予想により、PERがどのように変化するかをとても注目していることを感じている。

日本のPERは「向こう1年間の利益見込み」ではなく、各企業の「今年度利益見込み」をベースとすることから、3月決算銘柄の多い日本市場において、現在のPERは、既に終わったこの3月までの利益が反映されているため、極めて“陳腐化”したものと言える。そのため、“45日ルール”によって本来5月15日までに出される決算短信における2021年度の業績予想によって算出される“新たなPER”が現在よりもどの程度下がるかを期待しながら待っている状態なのだ。

日経平均の各銘柄の構成金額は、みなし額面と除数によって計算することができるが、先週金曜日4月16日(日経平均:2万9,683.37円)時点で、構成金額のトップはファーストリテイリング(9983)の3,249.31円で、この金額が500円以上なのは同社を含めて13銘柄である。ファーストリテイリング以下は、ソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)、ファナック(6954)、ダイキン(6367)、アドバンテスト(6857)、KDDI(9433)、エムスリー(2413)、信越化学(4063)、テルモ(4543)、TDK(6762)、リクルートHD(6098)、京セラ(6971)と続いている。

これらの銘柄のうち、ファーストリテイリング以外は全て3月決算である。因みに、このファーストリテイリング(55.8倍)とエムスリー(178.1倍)を除いた11銘柄の構成金額で加重した現在のPERは31.26倍となる。(クイックデータよりスプリングキャピタル社試算)

世界の同業他社と比べてファーストリテイリングのPERが高いことは外国人投資家がよく指摘することだが、半導体関連についても同様の認識を持っている者は多い。2021年度の業績回復が顕著なものとなり、上記11銘柄の加重PERが25~26倍程度にまで低下すれば、指数全体のPERも大きく低下し、世界的に見て割高感はなくなると考えている。日経平均構成比率の高いこれらの銘柄の決算はやはり重要である。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。