日経平均株価の急落

GW明けのちょっとゆるいモードが残る5月11日からの日経平均株価の急落は、かなりの衝撃とガッカリ感をもたらした。3日で2,000円という下げ幅、スピードは久々に日経平均VIが30を超えるような投資家の警戒モードをもたらしている。日経平均は2月の高値どころか3万円もなかなか超えられないという印象が強まってはいたものの、下値は1月安値と3月安値を結んだラインに支持されていて、所謂三角持合いの形をつくっていたのだ。その三角の頂点に近づき、さてどちらに放れるかと見守っていた所にこの下げである。はっきり下放れてしまったというガッカリだ。

その背景は、米国のインフレ懸念による緩和縮小の早期化、それによる米株の下落と説明される。米連邦準備理事会(FRB)の当局者から繰り返し「インフレ高進は一時的」と説明されても市場は納得しない。当局者の一部や今はFRBの人ではないイエレン財務長官の発言の方に反応したりする。しかも「早めに縮小の議論を」「金利は少し上がるかも」との発言がその通りになったとしても、国債買い入れの額が減るだけでバランスシートが減るわけではないし、イエレン財務長官の言うように市中金利は景気過熱が心配されるような状況なら少しは上がって当然だ。それくらい市場は低金利、超金融緩和に慣れきっていて、ほんの少しの緩和縮小が怖いのかもしれない。だとすると、これからも発言や指標で右往左往するのかもしれない。

しかし、日本株の今回の下げは米株よりひどい。なにしろNYダウやS&P500は史上最高値からの調整なのである。かたや日本は2月高値を超えられずにもたもたした挙句の下げだ。これには日本株固有の理由があるはずだ。新型コロナウイルスワクチン接種の遅れはよく指摘されるようになった。またまた緊急事態宣言が延長、対象地域も拡大という状態では経済活動の再開は望みにくい。それなら急回復している英国や、着実に再開されている米国に資金を持っていこうかなと考えるのも道理だ。

5月12日朝、27日実施のMSCIの定期銘柄見直しで新規採用0銘柄・除外29銘柄と発表された。除外ばかりだ。日本株は海外勢から見放されているのかとの不安が頭をよぎる。しかしこれは時価総額基準で判断がなされるそうで、これまでも除外が多いことも良くあり、特に心配する必要はないそうだ。通常気にしていなかったので手元のノートにあまり残っていないのだが、昨年11月の入れ替え時も新規採用5・除外21と圧倒的に除外が多かったが話題になっていない。昨年11月といえば日経平均は大幅上昇の初期である。すると今回は下げているから気になっただけかもしれない。なお、5月27日の引け値基準で実施されるため、実施日に向け除外銘柄は売られやすいが、そこでアク抜けし反転上昇しやすいとの指摘もあった。

さらに下落要因として気にされたのが日銀によるETFの買い入れがないことだ。5月11・12・13日と日銀は結局ETFを買わなかった。この4月から買い入れはTOPIX型に1本化され、「原則6兆円」という買い入れ基準は撤廃された。「より機動的」な買い入れを行うとしていたが、今回のような急落で買わない「機動的」とはどんなものなのか疑問が生じる。これまでは前引けのTOPIXの下落率を基準に買い入れが行われるのではないかと見られてきた。今回は前場で-1.99%の日にも買いが入らず、2%超えると買うのか?とも言われたが、日銀黒田総裁が「機械的に行っているわけではない」と発言しているので、そういう基準でもないようだ。日銀の買い入れに頼るというのも情けない話ではあるのだが、急落した時に守ってくれるゴールキーパーが居てくれるかどうかという安心感は大きい。同様に売り方にとっての恐怖感も大きかろう。「機動的」な対処は、市場からまた試されることがあるかもしれない。

 さらに今回ベテラン市場関係者に気にされていたのが10日の夕方に日本経済新聞社から発表された「日経平均株価の算出や選定のルールの改定案」というものだ。「株価の水準調整にみなし額面を使っていた点を改め、各構成銘柄の株価を株価換算係数で調整する形に変える。改定案は広く一般から意見募集したうえで最終決定する」とのことだ。東証がプライム市場などに再編するのを前にということだが、この時期に唐突な発表と見られている。

大きな入れ替えは2000年4月にあった。一気に30銘柄も入れ替え、しかも時流に沿うため除外銘柄はオールドエコノミーの低位株が中心で、新規に採用されたのはハイテク値がさ株が中心だったためインパクトが大きかった。時はちょうどITバブルの絶頂期。バブル崩壊も重なって、発表から入替までに大きく買われたハイテク値がさ株は入替後に大きな下落に見舞われることになる。

市場関係者によれば今回のルールの変更は値がさ株を組み入れるためではないかという。日経は2000年の反省で値がさ株を指数に組み入れられなかった(と推測される)ため、ルール変更で指数インパクトを抑えようとしているというのだ。組み入れの候補は任天堂(7974)村田製作所(6981)とささやかれている。日経平均株価が日本を代表する指数だというなら、入っていないのが疑問というくらいの代表企業である。しかしこれらの値がさ株を買うにはそのほかの銘柄を売って資金を工面することになるのではないかといった全体の下落要因も気にされる。

下げれば疑心暗鬼になるもので、それは決して褒められたことではないのだが、コロナショックの底値から1年以上たったことでもあり、「戻り」の後を想定して気を引き締めていきたいと思う今回の急落であった。


(フリーアナウンサー / 証券アナリスト かのうちあやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。