日経平均が30年半ぶりに3万円の大台を回復したことが話題になっていますが、米国株と比較しても日本株の強さが目立っています。昨年末と18日の終値を比較すると日経平均株価は+10.17%、TOPIXは+7.60%、NYダウ平均株価は+3.29%となりました。日経平均株価(N)とNYダウ平均株価(D)の価格比を取ったND倍率は最近上昇傾向にあり、その背景には日本株の相対的な割安感があったのかもしれません。本稿ではND倍率の傾向と直近の日本株の物色動向、そして今後の投資戦略について紹介しています。
ND倍率の推移
図は日経平均株価、NYダウ平均株価、ND倍率の推移です。日経平均株価とNYダウ平均株価は2000年4月を100として指数化しています(2021年2月は18日までのデータです)。2000年4月を起点としているのは、同月に30銘柄という大量の銘柄入替えが行われ、指数のグロース(成長)株化が進んだ時期であるからです。

トランプ前大統領の就任以降、ND倍率は米国株の独歩高を背景に長期的には下落トレンドにありましたが、移動平均と併せて見ると短期的には上下変動を繰り返してきたことも分かります。直近のND倍率(図1の点線で囲んだところ)は移動平均を上抜けしており、短期的なND倍率の上昇を示しています。ND倍率は日経平均株価とNYダウ平均株価のパフォーマンス比なので、ND倍率の上昇は日経平均株価のパフォーマンスがNYダウ平均株価のパフォーマンスを上回ってきたことに他なりません。
今回のND倍率上昇の背景
ND倍率上昇の要因としてはいくつか考えられます。その1つにNYダウ平均株価の主要構成銘柄であるアップル(AAPL)の株価が伸び悩んでいることが挙げられます。また、ゲームストップ株の急騰に代表される米国株市場の急変で、ヘッジファンド等が米国株のエクスポージャーを減らし、相対的に安定している(ロビンフッダーの脅威にさらされていない)日本株市場に資金を振り向け始めた可能性も考えられます。また、米国の長期金利が急上昇し、米ドル対円相場が円安ドル高に進んだことで、輸出企業の多い日本株に再び注目が集まり始めたとも考えられます。
ただし、これだけ早急な上昇はそれだけでは説明がつきません。そこにはゲームストップ株急騰同様にオプションが絡んでいると考えられます。具体的には、日経平均が上昇したことで、コールオプションの価値が上昇・プットオプションの価値が下落し、オプションの売り手側が日経平均先物等を新規買い・買戻しを迫られ、さらに日経平均が押し上げられるというスパイラルが発生したものと考えられます。
また、冒頭紹介したように、12月末と18日の終値を比較すると、TOPIXよりも日経平均のパフォーマンスが良好でした。日経平均のほうがTOPIXよりも指数先物等の取引が活発なことに加え、日経平均が大型グロース(成長)株を中心に構成された指数であることも優位に働いたと考えられます。ちなみにTOPIXは大型グロース株と大型バリュー(割安)株のブレンド指数とされています。
投資に活用するなら
ND倍率が上昇に転じたことに着目した投資戦略として考えられるのは、日経平均株価の買い建てとNYダウ平均株価の売り建てを組み合わせることになります。指数そのものは取引できませんので、ETFや先物、CFD、eワラント(コール型の買いとプット型の買い)で代替することを考えます。
また、日本株の中でも大型グロース株が選好される状況が続くとするならば、セクターとしては半導体関連株、電子部品株、ゲーム株あたりには注目したいところです。買いの主体が機関投資家である場合には好業績の銘柄を選別していると考えられますので、大型株の中でも業績好調株を選んで投資することが考えられます。これらの銘柄群には最低投資元本が百万円を超えるような値がさ株も多く、なかなか個人が手掛けにくい場合もありますが、eワラントのコール型を活用すれば、数万円もあれば個別株にレバレッジの掛かった代替投資が可能です。
一方、グロース株の株価が上昇しすぎたことで、業種ごとの資産の分散が崩れてしまっていることも考えられますので、ある程度上昇した銘柄群のポジションを減らし、出遅れている業種や企業の株を買い増す、いわゆるリバランスの動きが発生することも予想されます。出遅れている業種としては、自動車、製薬、化学などが該当します。リバランスの発生を予想するのであればこれらの業種のコール型eワラントを買い付けておくのも一手です。
ただし、オプション取引等によって生じた株価の急上昇だと考えるのであれば、そのポジションが決済されたときに思いもよらない株価の変動が引き起こされる可能性もありそうです。相場変調の兆しを感じたら、日経平均を対象とするプット型eワラントなどを買い付けて、相場の下落に対してリスクヘッジを行ってみるのも良いでしょう。
(eワラント証券)
* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。