日銀マジックは今後も続くか?

皆さん、2010年12月15日は何の日だったか覚えていらっしゃるでしょうか?
“困った時のウィキペディア”を見ても、特筆すべきイベントなどは出てきません(笑)。

しかし株式市場においては「日本銀行が株価指数連動型ETFを購入する」という禁断の果実に手を出した日として重要視されています。

あれから約9年が経ちました。

当初は残高上限4,500億円の時限措置として導入された制度でしたが、その後のいわゆる「黒田バズーカ」の発動も相まって、現在では年間6兆円を購入する当たり前の制度となってしまいました。

そこで今回は、この「禁断の果実」戦略が果たして今後どういうリスクを孕んでいるのかを解説したいと思います。皆さんが投資する際の一助になればと思っております。

日銀による巨大ポジションはどれくらい?

まずは下図を見てください。

これは日銀がETF買いを発動した日の「1日あたりの買付金額」をプロットしたものです(2016年4月より日銀が定期(毎営業日)で買付を行っている「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を除きます)。
2010年の段階では100億ちょっとの買付だったのですが、2014年の黒田バズーカ第1弾を皮切りに、2016年の第2弾発動もあり、現在では1日あたり約700億円購入するのが常態化しています。

それでは日銀は現時点でいくらのETFを保有しているのでしょうか?
下図を見てください。

約27兆円保有していることが分かるかと思います。
黒田バズーカの凄まじさが顕著に表れていますよね?

さて、このグラフには他にも折れ線グラフが2種類プロットされていると思います。
緑の線は日経平均株価なんですが、赤線の「平均買付単価(想定)」とは何でしょうか?

日銀は、前場に様子を見て「相場が弱い。価格を支える必要がある」と判断した時に、後場から大引けにかけてETFを購入してくるのが一般的な慣習と考えられています。
従って、「もし日銀が大引けで日経平均だけを買っていたら?A」という前提に立って、大引けの金額を買付単価として加重平均をしたものが、赤線の「平均買付単価(想定)」になります。

2010年から株価水準が上昇し続けているにも関わらずETFを購入し続けているわけですから、当然平均単価は上昇しますよね?しかも黒田バズーカ以降、買付額が数倍に増えているので、今後も買付単価は更に上昇していくことが予想されます。
因みに上記前提の基で弊社で試算した買付単価は、2019年11月13日現在で19,043円です。
従って、現在の日経平均23,500円近辺から約20%下落した場合、27兆円のポジションは赤字になるという計算になります。
怖ろしいですよね・・・?
しかし当の日銀はそれを許さないでしょうから、もし相場水準が20,000円を割ってくるようなことがあれば買付額を増額するなりして、買付価格を死守するものと予想されます。

日銀には逆らえない?

それでは、これ以上日銀は株価指数ETFの買いオペ政策を続けられないのでしょうか?
下図を見てください。

これは「東証全体の時価総額に占める日銀のETF保有残高の比率」を表したグラフです。
このグラフを見る限り、日銀の(間接的な)保有比率は年々上昇し続けているとはいえ、まだ約5%弱の水準に留まっています。
まだ買いオペを続ける余地があると思っても良いかと思います。
東証全体の時価総額が約600兆円ですから、日銀が宣言している年間買付金額6兆円というのは市場全体の約1%のシェアになります。従ってこの政策をあと5年続けたとしても5年後のシェアは約10%弱程度ですから、5年は続ける余地があるかと思われます。

今後のリスク要因と展望は?

日銀がこの政策を続ける以上、リーマンショック級の景気後退イベントが起こらない限り、日本株はレンジの下値をじりじり切り上げるような相場が続くことが想定されます。
では日銀がこの政策を続けられなくなるリスク、または次なるリーマンショック級のイベントは何でしょうか?以下の3つが候補として考えられます。

  1. ①2021年9月末までの安倍自民党総裁の任期
    黒田総裁の生みの親は安倍自民党総裁です。安倍さんが自民党の党則を再々度改正して「4期連続可」としない限り、安倍さんは総理の職を退くことになります。そうなると黒田日銀総裁の交代も視野に入ってくることになります。
  1. ②2023年4月8日までの黒田日銀総裁の任期と年齢
    黒田総裁自身の任期もありますが、私が注目したいのは黒田さんの年齢が現在75歳ということです。任期があと3年半あるとはいえ、80歳近くになった本人が再々任を引き受けるかどうかは疑問です。そうなれば後任担当者の政策次第ではバズーカ終了の可能性もあります。
  1. ③中国経済の成長率鈍化
    リセッション入りせずに粘り強く耐えている中国経済ですが、成長率が鈍化しているのは事実です。国民が豊かになり、消費を昔ほどしなくなったことが背景にあると考えます。 リーマンショック級のイベントではないかもしれませんが、世界を牽引する中国経済の成長率が鈍化することで世界経済がリセッション入りする恐れがあります。そうなれば日銀の政策をもってしても株価を支えることは困難だと考えられます。

以上、順調そうに見える足元の相場状況ですが、ここで述べてきたようなリスクもあるということを念頭に置いて日々の相場と向き合ってもらえればと思います。

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(eワラント証券 マーケティング部ヴァイスプレジデント 吉野 真太郎)

※A 実際には日経平均連動型ETFだけでなくTOPIX連動型ETFも買付の対象になっています。また購入するタイミングも大引けではなく、後場VWAPなどの方式を採用していると考えられます。

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。