本決算発表まで「欧州」は動かない

昨年の寄稿において、アベノミクス相場の始まった時期を基点とした外国人の(日本株式指数)先物売り越し金額が4.3兆円にまで膨らんでいることを指摘したが、売りはその後も続き、年末時点で5兆円規模にまで膨らんだ。

5兆円という金額は、先物取引が始まってからどのタイミングを基点として計測しても無い水準であり、事実上、外国人による過去最大の先物売りが昨年末に溜まっていたと言えよう。

その買戻しが、今年に入り継続している。

JPXが発表している週次の主体別動向によると、外国人は今年に入ってから2月8日までの6週全てで先物を買い越しており、その累計金額は6,882億円となっている。

興味深いのは、1月第1週は大発会の1月4日だけであったが、前日、米国においてアップル・ショックが起き、この日、日経平均は452円(-2.26%)程度下落し、外国人も日本株の現物(現金)を2,086億円も売り越したのだが、一方で先物については、その6割にも相当する1,275億円の買い越しとなったことである。

通常、このように指数が大きく上昇・下落する際に、外国人が現物と先物で、売り/買いが逆の動きとなることはなく、非常に珍しい日であったということである。

とにもかくにも、今年に入ってからの外国人の先物買い戻しの動きが、指数の下支え要因として働いていることは確かであろう。

しかし、現物については、一向に積み増しの動きが見られないことも事実である。

今年に入ってからの6週で買い越したのは1月第4週の1回だけであり、6週累計では7,162億円の売り越しと、先物の買い越し金額を僅かに上回っている。

これにより、アベノミクス相場の始まりを基点とした買い越し金額は、ピークであった2015年6月初旬の約21兆円の4割程度である約9兆円にまで減少したことになる。

約9兆円という金額は、アベノミクス相場が始まって半年が経過した2013年5月の水準である。

上の図表は2008年以降の、主体別動向における外国人地域別動向(現物)を集計したものだが、主要3地域(「欧州」、「北米」、「アジア」)が、昨年大きく売り越しとなったことが分かる。

3地域合計での売り越し金額は5兆2,000億円を超え、それまで最も売り越し金額の大きかった、リーマン・ショックが起きた2008年の約3兆6,000億円をはるかに上回った。

3地域の累計売買動向を、それぞれ、東日本大震災以前より辿ってみると、何れの地域についても累計買い越し金額がピークに達したのが、上海総合指数の急落が起きた言わば上海ショック前の、前述した2015年6月の頃であり、その後は、程度の差こそあれ売り越し傾向が続いている。

3地域のなかで、やはり大きな傾きを示してきたのは、オイルマネーや産油国のSWF(政府系資金、ソブリンウエルスファンド)、それに、ロングオンリーの年金を多く含む「欧州」である。

「欧州」の需給が日本株の動向に大きな影響を及ぼしてきたことが分かるが、「欧州」がこれまで日本株を大きく買い越した時期には季節性が見られる。

過去に「欧州」が月次で最大の日本株の買い越し(2兆円)を記録したのが、ちょうど日経平均が16連騰した2017年10月であるが、10月や11月、4月や5月といった、3月決算銘柄の本決算、第2四半期決算の発表が行われる際に大きな買い越しを記録してきた。

素直に決算の状況を見て買ってくるということである。

決算状況を見極めてバリュエーションで買うという行為は、短期売買ではないロングオンリー・ファンドの投資行動の本質とも言える。

次の本格的な買い出動が出るとしたら、4月下旬から5月中旬の本決算の発表を待ってからであろう。

無論、“2019年度の業績見通しが明るい”という前提条件がついて、のことではあるが。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。