かのうちあやこの『東京ゲームショウ2021オンライン』レポート

世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2021オンライン」が9月30日に開幕した。新型コロナウイルス感染対策のため2年連続のオンライン開催だが、実際の展示会場もプレスとインフルエンサー限定で設けられた。初の試みとして、参加者がアバターを操作してオンライン上で出展ブースや体験イベントを楽しめるVR会場も用意されていた。

今年25周年を迎える東京ゲームショウのテーマは「それでも、僕らにはゲームがある。」だ。
次の25年でゲームはどこに行くのか? 何がどう変わっていくのか? 基調講演では、今ゲームの世界に起こっている大変革についてゲームクリエーターたちにインタビューする形で行われた。モデレーターをつとめたのはKADOKAWA Game Linkageファミ通グループ代表林克彦氏だ。

以下3つのテーマについて、

    デジタル革命に伴う「体験装置」としてのゲームの進化 
  1.  カプコン CS第1開発統括 第1開発部 ディレクター  佐藤盛正氏
    デジタル革命で拡張する、ゲームコミュニケーションの未来
  1.  バンダイナムコエンターテインメント チーフプロデューサー / ゲームディレクター  原田勝弘氏
    デジタル革命で変化する、ゲームエクスペリエンスの未来
  1.  コナミデジタルエンタテインメント「eFootball」シリーズ プロデューサー 木村征太郎氏

まず、カプコンの佐藤さんからはゲーム表現の可能性について聞いた。佐藤さんは世界的に人気のサバイバルホラーゲーム「バイオハザード」の直近2作品のディレクターだ。今年バイオハザードも25周年を迎える。上映された96年3月発売の第1作と21年5月発売の最新作「バイオハザード ヴィレッジ」を比較すると改めてその映像には隔世の感があった。「ヴィレッジ」は、レイ・トレーシング(光線などを追跡することで、ある点において観測される像などをシミュレートする手法)によって光の屈折や反射をリアルタイムで計算し現実に非常に近い映像が作られている。また、3Dオーディオを採用し、音も360度どこからでも響くようになった。表現力は25年前から比べられないくらい跳ね上がったそうだ。作り手、開発者にとってもやりがいのある状況だという。

佐藤さんが重視してきたのは、どれだけ生々しい体験を提供できるかだ。ホラーゲームなので、痛いとか怖いとかまるで自分が味わっているかのように「体験」してもらうことが重要だそうだ。今のゲームの技術的な進化は目覚ましく、現実とほぼ見分けがつかないレベルがうっすら見えてきたという。現実に近づくという面ではゴールは見え始めている。

一方、ゲームは自分自身がプレイヤーとなって関ることができる双方向性のあるメディアだが、その部分では進化の余地があるという。プレイヤー自身が関わることで、見るだけ・聞くだけではないゲームらしいリアルがあり、「体験」の生々しさはもっと向上できる。それはリアリティの追求にあった今の進化の先にはないのではないかとのお話だった。

確かに、現実に近づくことがゴールなら現実を再現できた時点で完成してしまう。実際に現実世界に生きている私たちにとって、それではゲームをする意味がない。現実なら起きることは想像がつくが、ゲームでは想像もできない体験が期待できる。

そこで佐藤さんは妄想ベースと断ってだが、人間の感覚自体をゲームプレイで拡張できないかと考えていると語ってくれた。例えば、人間の数千倍から1億倍も優れた嗅覚を持つ犬にとって、世界はどう見えているのかだ。現実に体験することはできないが、ゲームのインタラクティブ性を通じて疑似的に味わえるのではないかと考えているそうだ。また、一部の人が持つ才能で「共感覚(通常の感覚に加えて別の感覚が無意識に引き起こされる現象)」というものがある。音に色がついて見えたりするらしいが、そういう感覚の人にとって都会の雑踏がどう見えるのか、想像がつかないがゲームなら表現できるのではないかという。

現実に近づき、生々しい体験を提供することが終わりではなく、現実を超える・常識を覆す力がゲームの進化にはあり得るのではないか。1ゲーマーとしてそんなゲームをやりたいという。

次にゲームコミュニケーションの未来というテーマでバンダイナムコエンターテインメントの原田さんからお話を伺った。今回のコミュニケーションは開発者とプレイヤーの間のものだ。プレイヤー同士のコミュニケーションはツールが進化し盛んになっているが、正式発売前のテストで反応やデータを収集するなど開発者とプレイヤー間のコミュニケーションにも進化がみられているそうだ。AIによるログデータの解析だけでも成果はあるが、生の声を聴くことを組み合わせているのだという。スマホの普及でより多くの意見を拾えるようになったそうだ。ユーザーアイデアがゲームを変えることもある。ゲームのジャンルにもよるが、プレイヤー同士のコミュニケーションがあるもの、チームを作って対戦するようなものは、口コミや発売前のテスト、開発者側とファンの信頼関係の構築などが重要だそうだ。

続いて、デジタル革命で変化する、ゲームエクスペリエンスの未来についてコナミの木村さんのインタビューに話を移そう。コナミは人気サッカーゲームシリーズ「ウイニングイレブン」を「eFootball」へとブランド名を変えた。家庭用ゲーム機の新型が出たタイミングでのリブランディングだ。これにあわせて新しいゲームエンジンも導入し、家庭用ゲーム機だけでなくスマホ向けも統合展開する。これはやはり市場環境の変化によるところが大きいという。スマホで遊ぶ人が増えたことで、パッケージ販売からF2P(基本プレイ無料型)へとシフトした。より多くの人に遊んでもらうという意味でF2Pモデルへの移行は欠かせない。また、家にテレビがない人も増えるような時代で、スマホ版を含め様々なデバイスに対応する大きなデジタルプラットフォームが欲しかったのだという。「eFootball」はサッカーゲームだがプラットフォームでもあり、eスポーツを見る、情報交換するといったSNS的な機能も持たせることで、メタバースに近いサービスに広げていければと語っていた。隙間時間にちょっと入ってもらえるような、もしかしたらライブや買い物もできる、そういう場を作っていきたいなと、それが未来のゲーム体験になると期待していた。

ここまで聞いてきて、ゲームは本当にずいぶん進化してきたんだなあというのが率直な感想だ。そして、まだまだ広がる期待が持てた。人間の時間には限りがある。様々なエンタメがそれを奪い合うなかで、隙間時間をスマホゲームが埋めるなどすでにもう手は尽くされたような気もしていた。しかし、まだ新しいびっくりするような体験がゲームを通してできそうだ。その時それは「ゲーム」と呼ばれないかもしれないが。

ところで今回のゲームショウではVR会場「TOKYO GAME SHOW VR 2021」が用意されている。バーチャル空間に再現された幕張メッセといったところだ。VRヘッドセットを持っていないので腰がひけていたのだが、今ちょっと覗いてみたら各メーカーのコンテンツが楽しめるようになっていて、これは楽しそうだ!混雑もなく自分の好きなキャラクター展示のところで写真(スクリーンショット)も撮れるようだ。
では行ってきます。


( フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうち あやこ )

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。