次の「催促」も債券から

「利下げ」を市場がコンセンサスとしているFOMCが開催されている。

ここに到った米国金利の動向を見る前に、まずは、日米欧の金利動向を見てみることが重要であるが、下のグラフにおける3つの囲みは、それぞれ、左から、サブプライムローン問題(リーマンショック含む)、欧州財政危機問題、そして、昨年10月以降の米国金利が上昇から低下に方向転換した後を示している。

直近の囲みの部分において、3.2%に米国債(10年債)利回りが上昇した途端、株式市場が大崩れとなり、その後、ファンダメンタルズ(経済の諸状況)の悪化が急速に意識されたのだが、年明けから各国中央銀行のハト派転換を待たずに、各地域の金利が低下に転じていたことが分かる。

そして、米国金利の推移であるが、年明けからのFRB要人のハト派転換後も、しばらくは、現在の誘導目標であるFF金利(2.25%-2.50%)を下回ることにためらっていたものの、利下げを催促する動きとなったことが分かる。現在、2年債金利とFFレートのスプレッドは、下限ベースの2.25%と比較しても0.375%程度であり、0.25%の利下げは、既に織り込んだ状態とも言える。

米国の商品先物取引委員会(CFTC)が毎週金曜日に、その週の火曜日時点の投機筋のポジションを発表することは広く知られており、ドル円や金先物については、この寄稿においても紹介したことがあるが、今回は、米国債(10年)先物のポジションを紹介する。

このグラフは2005年秋以降の長い期間で作成したが、ご覧頂くと、これまで、投機筋が債券先物を売る場合、およそ20万枚(左:逆目盛)程度がポジションの限界であったものが、大きな四角で囲った利上げ期間においては、それを大きく上回る40万枚(2017年1月)、75万枚(2018年9月末から10月初)という売りポジションが作られたことが分かる。

投機筋とは、機関投資家と違い、現物を保有してそのヘッジで先物売りを用いるというよりは、方向感でポジションを組成することが主であると考えると、「さらに金利が上昇する(価格が下落する)」というその時点での目論みは外れ、その後、金利低下局面で損切りの買戻しを行ったであろうことが想像される。

そして、現在、金利が低下するにつれて、今度は逆バリの売り物が40万枚程度にまで膨らんでいる。

かつて、このように金利低下場面で売り玉が膨らんだことが一度だけあり、その部分のポジションと金利の動向を矢印で示したが、今回、売りポジションが買い戻されるものの、金利は上昇するという、このときのパス(道)を再び辿るかというと、その可能性は低いと考えている。

その根拠は、今回の景気拡大により、政策金利を上昇させるということまで成し得たのが、日米欧において米国だけであるということだ。

昨夜(6月18日)、ECBドラギ総裁が講演において、「ユーロ圏の経済見通しに改善が見られない場合は、追加緩和が必要である」、「マイナス金利は、これまで欧州にとってとても有効な手段であったことが証明されている」、「量的緩和、資産買い入れにはまだ、『かなりの余裕』がある」と、ハト派発言を連発したが、これは、自らの通貨安を招くことにもつながる。事実、この一連の発言による株高について、トランプ大統領は不愉快そうなツイッターを配信している。

「通貨安戦争」。

世界的に貿易が停滞する一方で、内需に経済状況を打開する活路を見出せない以上、交易条件で有利になる自国通貨安を望むことは、たった一度ではなく何度も通ったパスである。

これを仕掛けられたら、市場に再度の米国利下げが次のシナリオとして浮上するであろう。また、それを出来る(高い)金利に、米国は既に到達していることは事実だ。こう考えると、やはり、次の「催促」も、米国金利が行うと考えるのが自然であろう。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。