止めるに止められない異次元緩和

異次元緩和の5年半を振り返る

現職の安倍首相が自民党総裁として再任された。今回の総裁選において、安倍首相はこれから3年間の新たな任期中に出口戦略(異次元緩和からの脱却)にメドをつけたいと発言している。

過去5年強に及ぶ異次元緩和。この非伝統的金融政策を含むアベノミクスでは、いまだ物価目標2%を達成することができていない(図1 朱線。2014年4月の消費税引き上げ(5%→8%)による影響を除く)。
ただし、全く効果がなかったわけでは決してない。消費者物価指数の対象外ではあるが、いわゆる資産価格は低金利の恩恵もあり、堅調に推移した。特に株価(青線 日経平均)は日銀による積極的・継続的なETF買い入れとの相乗効果により、異次元緩和開始当初に比べて約1.6倍となっている。
その一方で、期待された資産効果(保有資産価値の上昇が消費性向を高めるという説)やその結果としてのトリクルダウン(富裕層による消費性向の高まりが、川下にも浸透するという説)も残念ながら確認できていない。

効果の薄い政策を続けて進退窮まるよりも、撤退・転進を図るのは正しい判断かもしれない。果たしてそれは可能なのか。

1年後には消費税引き上げが待っている

 結論として、出口戦略への転換(異次元緩和(非伝統的金融政策)から正常化(伝統的金融政策への回帰)へ)は不可能に近いと思われる。1年後(2019年10月)には消費税増税が控えているためだ。
消費税は現行の8%から10%に引き上げられる予定だ。GDP成長率が大きく落ち込んだ前回の消費税増税(2014年4月)の教訓から(図2)、今回は軽率減税が導入されるなどの対応策も講じられている。

金融政策の正常化(緩和策の終焉)はこれらの準備を台無しにしてしまうリスクがあることを否定できない。また、消費税増税後の消費者物価指数(前年同時期比)への影響は少なくともその後1年間はその推移を慎重に観測する必要がある(図2 朱線)。そのあたりは金融政策決定会合後の黒田日銀総裁が7月・9月と重ねて強調しているところでもある。そうすると、少なくとも今から2年間(今から消費税増税までの1年間+消費税増税の経過観測を行う1年間)は金融緩和を継続せざるを得ないと思われる。

来年度の消費税増税から1年経過したとしよう(消費税増税の経過観測期間の終了)。その時点で安倍総裁の任期は1年を切っており、いわゆるレイムダック(政治的な影響の喪失)などと言われる時期に差しかかっていることになる。おそらく安倍首相にとって、総裁としての任期が1年弱となった段階で、景気に対して毒となりかねない金融政策の正常化へ舵を切る動機はないのではないか。とすれば、先日の出口戦略転換発言は別として、安倍首相の自民党総裁任期中は現在の異次元緩和が継続される可能性も高いのではないか。

金融緩和の継続は好調な株式市場の下支えにも

 トランプ減税の恩恵で好決算に沸く米国市場は上昇を続けており、米ドルも対円では上昇している。一方で、日本でも好調に株価が上昇しており(図3 青線・日経平均)、政府・日銀にとっては願ってもない神風が吹き始めているのかもしれない。このまま緩和政策を継続する限り米国との金利差が拡大し、経済成長とインフレ目標の同時達成をもたらす可能性もあるからだ。
いずれにしろ、当面は米国市場からは目が放せないのではないだろうか。米国における減税効果の剥落過程が明らかになる2019年1月~3月期以降の経済指標や決算発表は、重要な転換点となるかもしれない。その他では、日本に対する米国追加関税の対象リストに変化があるかどうかも日本経済及び日本株市場の今後を左右する要素の1つとなりそうだ。

(eワラント証券 投資情報室)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。