現在の外国人先物売りが全て買い戻されることはない?

先月の寄稿において、3月と9月の配当の権利付き最終日を含む週のアノマリーとして、外国人が日本株指数先物(日経平均先物、TOPIX先物)を売る傾向が続いていることを、2014年以降の表をもって示したが、その後の5週間データが揃ったのでまずはこのアップデイトしたものを載せる。

これによると、この9月も、配当取りの週に外国人が先物を3,532億円売ったものの、その後の5週間で4,720億円の買い越しに転じ、その結果、日経平均は4.4%程度上昇したことが分かるが、配当取りの翌週も外国人は先物を5,086億円売り、日経平均が週次で2.1%下落したことを考えると、その後の4週間で9,800億円程度の買いを入れ、日経平均は6.7%上昇した計算となる。

東証が先週の木曜日(11月14日)に発表した数字から、その前週までの6週間全てで外国人が日本株の現物(現金)を買い越したことが話題となった。6週間累計での買い越し額は1兆4,779億円とそれなりに大きいが、それではこれから外国人が日本株を継続的に買い越していくことが期待できるかと言うと、ヒストリカルな推移からその確証は持てないだろうというのが正直なところである。

これはアベノミクス相場の始まりからの外国人の日本株の現物(現金)購入・売却を累計金額ベースで表したものだが、外国人が日本株のポジションを膨らます動きは、2015年の上海ショックよりも早くに、21兆円程度の累計買い越しでピークアウトし、現在の残高はその三分の一程度でしかないことが分かる。このような状況で6週間連続で買い越しとなったからと言って、それがアンダー・ウェイトしていた部分を補う動きではなく、本格的に日本株を再度買い始めたのだと確信を持つことはとてもではないができなさそうだ。

確かに、このグラフで赤矢印を付した2016年夏以降に、外国人が再度日本株の残高を積み上げたことがあったが、このときは、企業業績が好調で、3月決算銘柄の第2四半期決算、そして第3四半期決算において、通期の業績見込みを上方修正する動きが顕著となった時期である。下方修正ラッシュとなった今回とはあまりにも状況が違う。

こう考えると、やはり、指数のこれからの動向は、外国人の先物の買戻しが握っていると考えざるを得ないだろう。

これは、同じく、アベノミクス相場の始まりからの外国人の日本株指数先物(日経平均先物、TOPIX先物)の購入・売却を累計金額ベースで記したものだが、昨年末、過去最高の5兆円の売り超となり、その後一時買い戻されたものの、この8月16日時点でピークを上回る約5.5兆円にまで再度売り超が拡大し、それが、9月、10月の買戻しで、ちょうど半分の残高である約2.7兆円にまで減少した状態であることが分かる。

この残高が全て買い戻されたら日経平均はどのくらいまで上昇するのかを、昨年からの週次の買い越し・売り越し金額と日経平均の週次騰落率から数式を作成し求めてみると、その値は2万5,214円と高い水準となるが、ここまで上昇すると、日経平均のPERは15.12倍と、15倍を超えることとなり、今度はバリュエーション上の割高感が浮上してくる。直近、この15倍台を記録したのは、ゴルディロックス相場の終期である、2017年年末から2018年初めにかけてのことだ。

このことは、企業業績が下向きの現在において、買い戻しのどこかで、「このバリュエーション(PER)であれば、もう買い戻す必要はない」という水準にぶつかるであろうことを意味している。そのため、今回、この全ての玉が買い戻される前提の試算値には届くことはないだろうと考えている。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。