米中通商協議のまとめと今後のシナリオ

今年1月1日に予定されていた、米国による中国製品に対する追加関税の発動が猶予されていますが、猶予期限となる3月1日が近づいています。

直近の株式市場は堅調に推移していたことから、市場参加者は米中通商協議の行方を楽観していた可能性があります。

しかしながら、米国の現地時間7日には米中首脳会談が期限前に開催される可能性が低いことが報じられていますし、米国の中国に対する強い姿勢はトランプ政権というより米国議会の総意とも言え、合意に至っても米国の姿勢に変化がなかったり、協議が決裂したりするシナリオも考慮に入れるほうが良いかもしれません。

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米中通商協議の経緯と今後の予定

昨年12月1日、G20 が開催されたアルゼンチンのブエノスアイレスで米中首脳会談が行われ、今年1月1日に予定されていた2,000億ドル分の中国製品に対する追加関税の発動(10%から25%)が90日間猶予されることになりました。

1月17日には中国側から劉鶴副首相が1月30日~31日に訪米し、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表やムニューシン財務長官らとの閣僚級通商協議に臨むと発表がありましたが、その翌週、劉鶴副首相の訪米に先立って中国側から提案された実務者協議の開催を米国が断ったという報道があり、株式市場が弱含む局面がありました。

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米中閣僚級通商協議は1月30日から開催されました。

31日にはトランプ大統領も「進展があったが合意には至らない」と追加協議の必要性について触れ、ライトハイザー代表とムニューシン財務長官に2月中の訪中を指示しました。

そして猶予期限の直前、2月27日~28日にベトナムで米朝首脳会談が開催され、同じタイミングで米中首脳会談も開催されるのでは、という観測報道が出ていました。

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トランプ大統領は習国家主席と会談するまで最終的な合意はないと述べる一方、猶予期限の延長が必要になるとは考えていないとしていましたので、株式市場も米中通商協議で合意がなされるものと楽観していた可能性があります。

しかし、米国の現地時間7日には米中首脳会談が期限前に開催される可能性が低いことが報じられ、株式市場は下落しました。

万が一、期限までに米中が合意できなければ関税は25%に上がる予定です。

多くの企業が米中貿易摩擦の影響による業績の下方修正を発表しているなか、追加関税が上がることになれば株価への下押し圧力となるでしょう。

また、合意がなされた場合でも米国議会は中国の知的財産権の侵害に対して厳しい態度で臨んでおり、米国議会が合意に関わらず強硬路線を維持するかもしれません。

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想定されるシナリオ

合意シナリオ

2月中旬に中国で行われる米中閣僚級通商協議、または猶予期限までに米中首脳会談が開催されて合意内容が発表されるというシナリオです。

昨年12月にホワイトハウスの声明にあった、貿易不均衡を改善するための中国による米国の農産品、エネルギー、工業製品等の購入や、麻薬にも指定されているフェンタニルの米国への持込対策を講ずることは中国にとって合意しやすいものと思われます。

ただ、米国が求めている中国による技術移転の強要、知的財産保護、サイバー攻撃などの構造改革についてどのレベルまで合意するかは不透明です。

株式市場は既に合意を織り込んでいたように思われますので、合意発表後に材料出尽くしで下落するかもしれませんが、中国が予想以上に米国に歩み寄る姿勢を見せれば、ポジティブサプライズとなって株式市場は大幅高で歓迎するかもしれません。

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合意するが問題先送りシナリオ

米中で何らかの合意がなされても、実績を作りたいトランプ大統領による政治ショーの色彩が強く、米国の対中強硬路線に変更は生じないというシナリオです。

米通商代表部(USTR)は2月下旬から3月上旬にかけて今年の貿易政策の方針となる「通商政策アジェンダ」を発表する予定ですが、昨年のアジェンダでは「中国、ロシア等の敵対的な政策から国益を守り対抗する」とあり、中国を名指しで批判しています。

また、4月中旬には米財務省為替報告書が発表される予定ですが、昨年は中国の為替操作国認定を見送っています。

通商協議が合意に至ってもその後のアジェンダや報告書に中国に対する強硬的な姿勢が見られる場合、中国の景気減速に拍車をかけ、株式市場には中長期的な下落圧力となることが想定されます。

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交渉決裂シナリオ

猶予期限までに合意に至らず交渉が決裂するシナリオです。

首脳会談が開催されれば交渉が決裂することは考えにくいですが、首脳会談が開催されないとこのシナリオの発生確率は高まります。

この場合は予定通り3月1日の猶予期限を迎えて中国に対する追加関税が発動します。株式市場は大幅安で反応するものと思われます。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。