米国大統領選挙の両建て検証 今後のリスクイベントに備える

11月8日に行われた米国大統領選挙の結果を受けて、為替相場や株式相場は大荒れとなりました。「メキシコ国境に壁を作る」「在外米軍の負担増」「関税の引き上げ」など過激な主張を繰り返していたトランプ候補が、事前の報道で伝えられていた劣勢を跳ね返して勝利をしたことで、リスクオフの流れから安全資産として円が買われ、米ドル対円相場は前日終値から最大で4円以上円高が進行しました。

米国大統領選挙は今年最大のイベントの一つとして注目されており、どちらが勝利したとしても一時的に相場が大きく動く可能性がありました。このようなボラティリティの上昇を投資機会とする戦略の一つとしてeワラントの両建てという戦略があります。
(参考)今後の3大リスクイベントにはオプショナリティのある投資が有効

そこで今回は、実際に大統領選挙当日にこの戦略を用いた場合にどのようなパフォーマンスを発揮したかを検証すると同時に、今後のリスクイベントとその際に選択する銘柄例をご紹介いたします。eワラントは最大損失が購入金額までに限定されていて、追証の心配も無いため、相場が大きく動くときでもリスク管理が比較的容易にできます。大荒れが予想されるイベントの際には、是非eワラントの活用をご検討ください。

銘柄の選び方とパフォーマンス

今回は100万円を元手として、大統領選挙の開票前に米ドルのコールとプットを買付け、開票当日の日本時間11月9日に売却した場合の投資成果について検証したいと思います。

まずは、対象となる銘柄の選び方と購入についてですが、ここでいくつかポイントがあります。

①イベントの直前に買い付ける
買付けからイベントまでの間に時間がある場合、イベント当日までに相場水準が変わり、両建てのパフォーマンスが悪化してしまう可能性があります。また、eワラントは時間が経過するほど時間的価値が減少してしまうので、相場水準が変わらなくとも保有しているeワラントの価値が減少してしまいます。これらを考慮すると、両建て戦略をする際にはイベント前営業日に買い付けるのがよいと思われます。今回は大統領選挙の開票結果が明らかとなった日本時間11月9日の前日8日の終値で買い付けたものとします。

②権利行使価格が相場水準に近く、満期日までの残存期間が短い銘柄を選択する
このような銘柄は比較的ワラントレバレッジ(実効ギアリング)が高く、対象の原資産が急騰又は急落した際にeワラントの価格が大きく動く可能性があるため、今回のような短期間で投資成果を求める際には適した銘柄と言えるでしょう。8日のeワラント取引終了時点の原資産価格が104.82円でしたので、今回は権利行使価格が104円、満期日が12月14日のコール・プットをそれぞれ選択しました。
米ドル 米ドル高(コール)型 第749回
米ドル 米ドル安(プット)型 第633回

③購入金額が同額となるように買い付ける
買い付ける際にはコール、プットの購入金額が同額程度となるように数量を調整してください。必ずしも同数量とならない点には注意が必要です。今回は元手が100万円ですので、それぞれ50万円程度ずつ買い付けるものとします。

下記の図は、11月9日における、この2銘柄の買取価格(買気配値)推移です。左軸がeワラントの買取価格、右軸が米ドル対円相場です。激戦州といわれるフロリダでのトランプ氏勝利が判明した13時台に、米ドル対円相場が大きく下落したことで、プットが急騰し、コールが急落していることがわかります。
20161124-1
仮に13時台終値で保有していたワラントを手仕舞うことができた場合の試算は次の表の通りです。eワラントは最大利益は無限大(プットの場合は原資産価格が0となるときが理論上の上限)で損失は投資金額までに限定されているので、プットの上昇分でコールの下落分を埋め合わせ、さらに15%弱の利益が出る結果となりました。
20161124-2
しかしながら、14時以降には「トランプ大統領」の誕生を市場が急速に織り込み始め、終値では前日とあまり変わらない水準まで米ドル対円相場は上昇しました。そのため売却時期でみると比較的短時間の間に手仕舞う必要があったといえるでしょう。

今後のリスクイベントと銘柄例

前述の通り、今回の大統領選挙では、売却時期に制限はありましたが、リスクを低減しながらボラティリティの上昇を投資の機会とする両建て戦略は有効だったと言えるでしょう。以下は今後ボラティリティの上昇を伴う可能性があるイベントとその際に選ぶ銘柄例です。これらのイベントの際にも両建ては有効に機能するかもしれません。

・12月4日 オーストリア大統領選挙
5月に行われた大統領選挙では難民保護を訴える左派のベレン候補が反移民を訴える極右政党のホーファー候補に得票率0.6%差で辛勝しましたが、手続きの無効によるやり直し選挙が12月4日に行われることになっています。事前の報道では極右のホーファー候補優勢と伝えるメディアもあるようです。仮にホーファー候補が大統領に就任した場合には、オーストリアがEU離脱へ向かう可能性も生じ、EUへの不信感がその他の国々へも波及する恐れがあります。同日にはイタリアでも国民投票が行われるため、こちらも注意しておいたほうがよいかもしれません。

この他にも2017年にはオランダ、フランス、ドイツといったEU諸国で大きな選挙が予定されていますので、その際にも両建ては活用できるかもしれません。

銘柄例
ユーロ ユーロ高(コール)型  454回
ユーロ ユーロ安(プット)型 394回

・12月13~14日 連邦公開市場操作(FOMC)
11月17日に行われた議会証言で連邦準備制度委員会(FRB)のイエレン議長は改めて12月の利上げを示唆しました。これまでのFOMCやFRB 幹部の発言を受けて、12月利上げの可能性は本稿執筆時点(11/21現在)で約95%と、市場では12月の利上げはほぼ織り込み済みのようです。とはいえ、トランプ氏の財政拡張策への期待と利上げ観測の高まりから、既に米ドル長期金利は急上昇し、ドル高が進行しています。金利上昇とドル高は金融引き締めの効果をもたらすことから、拙速な利上げを見送る声が出ないとも限りません。FRBがいずれの答えを出すにせよ、一時的に米ドル対円相場は大きく動く可能性があります。

銘柄例
米ドル 米ドル高(コール)型 756回
米ドル 米ドル安(プット)型 641回

(eワラント証券 投資情報室次長 多田 幸大)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。