米国市場:利上げサイクルの終焉?高まる金融緩和期待

 1月30日(現地時間)、FOMC(連邦公開市場委員会:FRBメンバーによる金融政策決定会合)終了後にパウエルFRB議長は定例の記者会見を開きました。本会合の決定内容は株式市場に好感され、同日のダウ平均は434.90ポイント(1.77%)上昇して引けています。(図1)

 本稿では今回のFOMC声明が市場に与える影響について検証し、今後の相場展開を考えたいと思います。今回のFOMC、およびパウエルFRB議長の発言骨子は下記の通りです。

<FOMC声明とパウエルFRB議長発言骨子>

  • 政策金利(FFレート)は変更なし(2.25~2.50%)
  • 米国経済の成長は堅固(Solid)で、雇用状況は歴史的な水準で安定していると認識
  • 利上げの可能性については、落ち着いたインフレ動向などから、やや後退したとみている
    (12月までのFOMC声明にあった「段階的な利上げが妥当」部分を削除)
  • 今後は様々なデータを忍耐強く読み解き、(何らかの)傾向が明らかになった時に政策判断を下す(リスク要因は未解決の米国政策課題、海外経済の軟化、弱含みの経済指標、金融環境の緊張化など)
  • 金融調節についてはこれまで通り政策金利(FFレート)を軸とするが、必要であればFRBのバランスシート(≒保有資産 図2 緑線ご参照)の調節も政策手段の一つとして考えている
  • 米国の財政が抱える問題(債務の膨張)は認識しているが、今日FRBが果たすべき責務とは分けて考えている

利上げサイクル終了の可能性あり

 昨年10月から約3ヵ月にわたる米国株式市場の急落は、FRBにとって金融政策を修正するきっかけとなりました。その結果、株式市場は昨年末以降にV字回復を果たしています。今回のFOMCにおける判断も※これまでの流れに沿ったものといえるでしょう。
※これまでの流れ(パウエルFRB議長発言)
昨年12月24日、2015年末以来の段階的な利上げの停止を示唆
1月4日、2017年後半に開始したFRBのバランスシート縮小(保有資産の減額)を停止する可能性を示唆

 今回のFOMCでの合意内容(パウエルFRB議長の会見内容も含む)は極めてあいまいです。これは今後の金融政策に自由度を確保しておきたいとの意図を反映したものと思われますが、緩和期待を背景に市場はこれを歓迎しました。

 今後の政策運営についてはパウエルFRB議長が指摘した通り、海外経済に対する不透明感(軟化する中国・欧州の経済成長、米中通商摩擦、英国のEU離脱問題)の払拭が大きなカギを握ると思われます。たとえば中国・欧州による米国製品への需要減退が傾向として明らかになった時、FRBは予防的に金融緩和へ政策を転換するのかもしれません。

今後は上値の限られた相場展開か

 金融緩和は通常、株式市場にとって好材料です。しかし、直近の2018年第4四半期決算の結果は、中国や欧州経済の低迷を受けて外需関連株を中心に下方修正となった企業が目立ちます。今後もこうした傾向が続くとすれば、利下げだけでは需要と供給の差を埋めることが困難だと思われます。

 また、パウエルFRB議長も記者会見で言及した政府債務の膨張は、今後も長期金利の上昇圧力として作用し続けるでしょう。景気後退期に短期金利を力ずくで低く抑えたとしても、長期金利への上昇圧力が続いていると、企業の金利負担は軽減しづらいかもしれません。信用状況の低い企業を除いて、借入期間(起債を含む)の長期化が進んでいるためです。

 政府債務の膨張に対して何らかの制限がかけられた場合、景気後退が鮮明となっても必要な景気刺激策を打てなくなるリスクが生じます。また、景気後退期には税収の伸びも期待し難く、一段と政府債務が膨らむことも懸念されます。

 2015年12月以降の約3年間にわたって利上げを継続してきたとはいえ、緩和状況が長く続いたことにより、行き過ぎた借入によって財務体質を悪化させる企業や、設備投資よりも自社株買いに向かう企業の増加などが目立つようです。特に行き過ぎた借入についてはパウエルFRB議長も会見の場で「注視している」としており、こうした動向が今後の米国経済にとって足かせになることも考えられます。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。