米国金利上昇と米国株式市場Ⅱ 長期金利の動向

一段の長期金利上昇が株価調整(下落)の引き金となる可能性は高い

 先日のコラム記事「米国金利上昇と米国株式市場」の中で“米国金利と米国株価が仲良く上昇する関係は終了”、“今後の金利上昇は、株価にとって基本的に下押し要因”、“借入れに依存する米国企業数の増加は株価の下落要因”、“米国金利は、同国の株式市場にとって先行指標”といった主旨のコメントをしました。日本の株式市場にとっても米国の金利動向は他人事ではありません。例えば日経平均とダウ平均・SP500との関係は現在、60%以上と高い相関(リンク)を示しているからです。場合によっては米国が風邪をひいて、日本が肺炎にかかってしまうケースもありうるでしょう。

今後、注意を払うべき金利上昇の要因


 米国債(指標は10年債)の動向を追ってみて下さい。(図1)米国債が売られた・買われた、金利が上がった・下がったは毎日、新聞やテレビ・ラジオといったメディアで必ず扱われますので、苦にはならないでしょう。ただ、どのようなイベントと関連付けてウォッチすればよいのでしょうか?

 少なくとも、下記三つのイベントが発生したときは、米国債の動向を抑えておいて下さい。

     

  • 米国の財政収支
  •  毎月、前月の実績が発表されます。
     財政赤字の拡大傾向が加速するようだと、国債は売られ、長期金利は上がる傾向にあります。

  • 追加的関税措置の行方
  •  対象国(特に中国)は保有する米国債を売却して対抗してくる可能性があります。
     債券が売られる=金利上昇です。

  • 米国債の入札状況
  •  何倍の応札状況だったか・落札利回りは前回に比べて上がったか。

米国の財政収支

 毎月発表される米国の財政収支。財政赤字が今以上のスピードで拡大していくと、金利上昇のスピードも加速することでしょう。公的機関の試算(図2)によると、米国の公的債務の対GDP(国内総生産)比率は現在の70%後半から、10年後には90%大に拡大してしまうと予想されています。この数字は、今回のトランプ政権による税制改革を加味しておらず、より早い時期に100%近くまで拡大するとの見方もあります。
 では、なぜ財政赤字の拡大は金利上昇に繋がるのでしょうか?
財政赤字が拡大すると、その分、その国の債務に対する返済能力は低下すると市場は判断します。これは直感的にご理解頂けるでしょう。借金しているのに金遣いの荒い人へ、喜んでお金を追い貸しする人はあまりいません。つまり、米国の財政赤字が拡大すると、米国債への信用が下がって売られやすくなる、つまり米国の長期金利は上昇しやすくなります。
 ちなみに、今回の税制改革、短期的には米国の企業にとって歓迎材料として受け入れられているフシもあり、株価の上昇要因となっているようです。

追加的関税措置の行方

 中国がこの政策に対して、資金引き上げ(米国債売却)で対抗してくる可能性があります。
 ご存知の通り、中国は海外勢としては米国債の保有比率で世界一位、昨年12月時点でその保有残高は約1.2兆ドルとなっており、全保有者のうち約7%を占めています。(出所:米国財務省U.S. Transactions with Foreign-Residents in Long-Term Securitiesより)
 中国が今後、この資金引き上げ(米国債売却)カードを米国に対して切ってくる可能性は非常に高いでしょう。実際、昨年8月に米国通商代表部(USTR)が対中制裁措置をちらつかせると、中国は同年11月・12月に米国債の売り越しで応じています。

米国債の入札状況

 応札状況(発行額に対して何倍の競争率だったか)や落札利回り(前回比でどのくらい上下したか)は大切な目安になります。
ちなみに、3月12日(現地)に行われた米国債応札状況は好調(10年債の応札倍率は2.5倍)だったようです。ただし、落札利回りは過去4年間で最高(最高落札利回り2.889%)でした。翌日の30年債の入札結果も規模は小さいながら好調でした。

次回は「米国金利上昇と米国株式市場Ⅲ 短期金利の動向」をお伝えします。

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。