米国金融市場:金融政策は市場を支えられるか!? 

昨年末以降、市場では米国の利上げ打ち止めどころか、金融緩和への方向転換が期待されつつあるようです。

こうした金融緩和期待を受けて株式市場も上昇を続けていますが、今後、米国金融当局は実際に利下げに転じることができるのでしょうか?

本稿ではFRBのバランスシート拡大・縮小の仕組みについておさらいし、その上で今後の相場動向について触れたいと思います。

FRBのOBと現役で異なるバランスシートの拡大・縮小に対する解釈

つい最近までのFRBによる金融政策は有効に作用していたと言えるでしょう。インフレ率(図2 赤線)はFRBの目指す2%近くで安定しており、雇用環境も歴史的好水準にあります。

米国はリーマンショック後にかなり早いタイミングで、大胆な金融緩和を行いました。

ただし、FRBによる米国債などの資産買い入れについては、当時のバーナンキFRB議長自身すら金融緩和としての効果には疑問を示しています。

これに対し、1月のFOMC(連邦公開市場委員会。金融政策の決定機関)直後、パウエル現FRB議長は、FRBによるバランスシート縮小の停止を今後の金融政策の一つの手段にする用意がある、と記者会見の場で述べています。この発言は足元の株式市場の安定には寄与しましたが、「市場に対する迎合」との厳しい評価もあるようです。

FRBによるバランスシート拡大の仕組みと効果

FRBはリーマンショック以降、超金融緩和策の一環として銀行から大量に米国債などの資産を買い入れました(FRBでは買い入れた米国債などを資産勘定に算入)。

一方、売り手の銀行はFRBから受け取った売却代金を準備預金としてFRBに預け入れています(FRBでは受け取った準備預金を負債勘定に算入)。これがFRBによるバランスシート拡大の仕組みです。

このようにFRBが安全とされる米国債などの資産を大量に買い入れることで、市場参加者がよりリスクの高い資産へ向かうように仕向けたと言ってもよいでしょう。

実際、この政策は成功したようにも見えますが、あくまで帳簿上のバランスが変化しただけで、市場の通貨供給量が増えたわけではありません。

こうなるとFRBによるバランスシートの拡大(米国債などの買い入れ)は、「市場刺激策」とは呼べても、「金融緩和策」とは呼びにくいように思われます。

FRBによるバランスシート縮小とその停止の効果

2017年の秋口より、FRBは金融政策正常化策(Normalization)のひとつとして、満期を迎えた保有債券の補充をせず、自然体でのバランスシート縮小を開始しています。満期を迎えた米国債などの償還金は順次、購入時に相手先となった銀行から預かった準備預金を払い戻しする原資となります。

このようにしてバランスシートから資産である米国債などと、負債である準備預金が減少し、全体としてバランスシートの規模は縮小していきます。

FRBのバランスシート縮小の停止は、今後予想される米国債の需給バランスの悪化に対する配慮と言い換えられるかもしれません。大幅な減税や積極的な財政支出の結果として、今後さらに米国債の供給増(金利上昇要因)が見込まれる中、安定的な買い手(需要)発掘が急務であるためです。

例えば、FRBがバランスシート縮小を停止し、満期を迎えた米国債については新たな米国債への再投資を開始すると、その分だけ米国債の買い手を探す必要がなく、需給バランスの維持に一役買うことになります。このことは結果として、米国債の金利上昇を和らげる効果もあるでしょう。

金融緩和のタイミングは近いのか

このように、FRBによるバランスシートの拡大・縮小は、長期金利に対しては効果が期待されるものの、「足元の金融緩和」の観点からはあまり意味のないもののようです。

従って、バランスシート縮小の停止による株式市場への効果は、限定されたものとの理解が今後進むと思われます。

パウエルFRB議長は相変わらず「米国景気は依然、力強い」としており、特に雇用面の指標は力強い米国景気を裏付けているようです。少なくとも現時点では、雇用面から利下げを予想し難い状況にあると言えるでしょう。

一方、繰り返しになりますが、昨年10月からの米国株式市場急落を受け、パウエルFRB議長は緊急避難的に利上げ並びにバランスシート縮小の棚上げを示唆しています。

時間はかかると思われますが、「FRBによるバランスシート拡大の仕組みと効果」「FRBによるバランスシート縮小とその停止の効果」において指摘した通り、市場がFRBのバランスシートの増減に金融引締・緩和の効果が期待し難いと気づいたとき、株式市場は上値が抑えられやすい展開となる可能性が考えられます。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。