米長期金利の上昇は中国による為替介入の影響か?

 米国の長期金利(長期国債の利回り)が急上昇しています。今年2月までの米国の長期金利上昇局面では株高を伴っていましたが、直近の株価動向は上値が重い展開が続いています。また為替相場を見ても米金利上昇と米ドル高が連動しているとは言えません。この背景には中国当局による為替介入の動きがあるかもしれません。中国当局による為替介入を前提とした上で今後の相場の方向性を考えると日本株にとってもしばらく厳しい状況が続くかもしれません。

米国株と為替相場の動き

 図1はNYダウ平均株価と米国の長期国債利回りの直近1年間の推移を見たものです(以下において「長期金利」とは米国の長期国債利回りのことを指します)。米国株は今年2月の急落発生までの間、長期金利の上昇とともに上昇していました。長期金利の上昇は長期国債の下落と表裏一体の関係になっています。つまり、米国債が売られて価格が下落すると長期金利は上昇し、米国債が買われて価格が上昇すると長期金利は低下します。株高と長期金利上昇が同時に起きていたということは、株高と米国債安が同時に起きていたと言う事になりますから資金運用主体が米国債から株式に乗り換えていた、という解釈もできそうです。しかし、直近の長期金利上昇は株高を伴っておりません。米国債から株式への乗り換えが進んでいるとは言えなさそうです。

 では金利と関係があるとされることの多い為替相場はどうでしょうか。図2は米ドル対円相場と米国の長期国債利回りの直近1年間の推移を見たものです。米国の金利上昇で米ドル高、という相場解説を聞くことがありますが、図2を見る限り必ずしも連動しているとは言えなさそうです。直近では長期金利が上昇しているにも関わらず、円高米ドル安になっています。米ドルの売り圧力が強いことを示しています。

米国債と米ドルを売っているのは中国当局か?

 株高を伴わない米国債売りと売り圧力が強い米ドル、という点から想像できるのは中国当局による為替介入の動きかもしれません。新興国通貨は下落圧力にさらされていますが、中国とて例外ではありません。中国人民元は対米ドルで安値圏にあり、中国当局は為替介入によって人民元を買い支えている可能性があります。具体的には、中国が保有する米国債を売却して得た米ドルを売却し、人民元を買うという介入方法です。中国は世界最大の米国債保有国であり(2018年7月時点)、中国当局による米国債売りは長期金利上昇に少なからずインパクトがあると考えられます。米ドル安も同時に発生していることから見ても中国当局による為替介入説はあり得そうです。

 図3は米ドル対人民元相場と米国の長期国債利回りの直近1年間の推移を見たものです。左軸の人民元は数値が大きいほど米ドル高人民元安、数値が小さいほど米ドル安人民元高となります。図2の日本円相場と比べて人民元相場は値動きが小さくなっていますが、これは中国当局による値幅制限とそれを支える為替介入によるものと思われます。今年1月から2月にかけて長期金利が上昇した局面では人民元が上昇していますが、為替介入を行っていたかもしれません。図4は人民元相場と中国の米国債保有額の推移ですが、為替介入をしていたと思われる時期に中国が保有する米国債の残高が減っていることが分かります。直近では再び人民元が安値更新を試す動きをしており、長期金利の急上昇から中国当局による為替介入の可能性が考えられそうです。

投資戦略

 直近の長期金利上昇が米国債から株式への資金シフトではなく、中国当局による為替介入を主たる要因とするならば、米国債安、日米株安、米ドル売りによる円高進行というシナリオが考えられます。株安を伴うのは中国当局による為替介入では米国債だけでなく米国株も売却対象に含まれている可能性や、中国経済への不安からのリスクオフ、長期金利の上昇により企業の資金調達コストや家計のローン負担の上昇などの影響が考えられるからです。今年1~2月を振り返るとNYダウ平均株価は1月26日に高値のピークをつけてから下落していますが、人民元は遅れて2月7日に高値のピークをつけており、中国当局による為替介入が株安につながった可能性が想定されます。

 このシナリオを前提とするならば、NYダウ平均株価、日経平均株価、米ドルリンク債を対象とするプット型eワラントの買い、225先物の売り建て、CFDでNYダウ平均株価や日経平均株価の売り建てが有効かもしれません。いずれもレバレッジ(てこの効果がある)商品ですが、eワラントには追証リスクがない反面、一般的に時間経過で保有している銘柄が目減り(タイム・ディケイ)するデメリットがあります。一方で225先物やCFDには時間経過で目減りすること(タイム・ディケイ)はありませんが、追証リスクがあります。なお、CFDの売り建てでは配当相当額の支払いもあります。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。