量子コンピュータで世界が変わる

最近、「量子コンピュータ」という言葉をよく耳にするようになった。文系の筆者にとってはただでさえ拒絶反応を起こしやすいものだが、おまけに実用化がまだだいぶ先となれば、その恩恵に与れるかどうかも定かではない。そうはいっても、量子コンピュータによって、様々な分野で現在生じている種々の障害が取り除かれて便利になることは間違いないようだし、金融分野でも大きな変化をもたらす可能性があるとなっては、少なからず投資家としてはかじっておく必要がありそうだ。現在のコンピュータ(量子コンピュータに対して「古典コンピュータ」と呼ばれる)が「0」と「1」のどちらかの値を利用したビット単位の計算を積み重ねていくのに対して、量子コンピュータは、量子ビットと呼ばれる「0」と「1」が重なりあったり、もつれたりした状態で、並列計算をすることで、一括して計算を行うことが出来る仕組みだ。これにより、古典コンピュータでは膨大な時間を要したような計算も、短い時間で最適な回答を得ることが出来るのが特徴である。

量子コンピュータはまだ開発途上で、大学や企業がこぞって研究開発を進めているが、実用化されれば、大量のデータの分析・処理時間の削減、製品開発の加速、作業効率の改善などが期待される。例えば、交通・物流分野では、量子コンピュータで計算された最適ルートを選ぶことで渋滞解消や業務効率化が可能となるほか、材料開発分野では分子配列や構造を素早く計算し開発プロセスの削減に応用できる。さらに、金融分野ではリスク計算や価格予測シミュレーションをリアルタイムで分析し、HFT(High Frequency Trading:高速取引)などに活用できるとみられる。グーグルやIBM、アリババ集団などの世界的大企業が開発にしのぎを削っているが、実用化には様々な課題を解決しなければならない。日本でも、理化学研究所量子コンピュータ研究センターの責任者である中村泰信氏(東京大学教授)を中心に産官学の体制で研究開発に臨んでいる。

こうした、あらゆる用途に利用可能な汎用量子コンピュータの開発が進むなか、特定分野に特化して膨大なデータから最適な組み合わせを見つけ出す「疑似量子コンピュータ」が国内で早くも登場してきている。東芝(6502)はインターネットにつながない疑似量子計算機の試験販売を3月1日からスタートした。すでにクラウド経由の高速計算システムを昨年導入しているが、データの入出力に一定の通信時間がかかることがネックになっていたようだ。今回のシステムでは、計算速度が従来の約10倍となり、通常の計算機で約1年2か月かかった計算も約30分で処理できるという。日立製作所(6501)も昨年10月から独自の疑似量子計算機を利用して、最適な勤務シフトを作成するサービスを始めたほか、富士通(6702)も創薬分野で疑似量子計算機を導入している。万能な量子コンピュータが登場するのはまだ20年程先とも言われているが、開発ステップを1つ1つクリアする中で、ビジネスでの活用に限らず、我々の生活をより便利にしてくれるシステムが登場してくるに違いない。

物色テーマとしての「量子コンピュータ」は、足元で鳴りを潜めている。しかし、過去に関連銘柄と市場で位置付けられ、大商いとなったフィックスターズ(3687)やエヌエフ回路設計ブロック(6864)の株価推移(月足)を見れば、その爆発力は一目瞭然だろう。また、万能な量子コンピュータの登場にはかなり時間がかかると述べたが、グーグルは2029年までに商用の量子コンピュータを生産する計画との報道も足元で見られている。技術の発展は我々の想像以上の速度で進んでおり、量子コンピュータ関連の物色再燃の波がやってくるのもそう遠い話ではないかもしれない。いつその波がやってきても良いように、日本株市場における関連銘柄をリサーチしておくのも1つの有効な戦略だろう。


(eワラント証券)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。