金利上昇が株式市場の重石に 今後注目すべき米国の金利動向

 米国株式市場が2月のVIXショック以来の下落幅を記録しました。同日に発表された生産者物価指数が強め(9月分 前月比+0.2%)だったとはいえ、ほぼ市場の予想通りであったことから、8月来の金利上昇に耐えかねた下落であったのかもしれません(同日の米国債市場は小動きに終わっています)。今後は更に米国の長期金利の動向を注視する必要がありそうです。
 約10年前と比較すると(図1 薄青部分)、政策金利(紫色)、米国債2年物利回り(水色)ともに現在は当時とほぼ同じ水準にあることがわかります。一方で、米国債10年物利回り(オレンジ色)、米国債30年物利回り(黄色)には1%前後の上昇余地があるようにも見えます(10年前の金利水準が適切であったことを意味するものではありません)。
 以下、米国金利市場の今後についてまとめてみます。

今後も長期金利が上昇する条件は揃っている-Ⅰ 米国債

 米国の長期金利が上昇する可能性は、高いのではないかと思われます。その理由として、

  • トランプ減税により、財政収支が大幅に悪化した(米国債の発行増要因。金利上昇につながりやすい)。
  • 今後も米国政府の債務額は拡大=米国債の発行増が予想されることから、長期金利は上昇しやすい状況にある(信用状況の悪化から、年限が長くなるほど金利の上乗せ幅(ターム(期間)プレミアム)が拡大する可能性にも留意)。
  • また、金利上昇により、政府の利払金額も増加しており、金利の上昇による悪循環が顕在化しつつある。
  • 10月11日には3年物と10年物、10月12日には30年物の米国債入札が控えている。応札状況次第では、一段の債券売り(金利上昇)につながる可能性もある。
  • FRBは、段階的な利上げモードにある(年内1回、2019年に3回といった意見がFRB内部では趨勢)。
  • 各経済指標は依然として景気の拡大基調が継続していることを示唆しており(遅れが目立っていた賃金も騰勢を示し始めたなど)、緩やかなインフレ懸念を払拭しきれていない。

今後も長期金利が上昇する条件は揃っている-Ⅱ 企業債

 金利の上昇の影響は企業債にも様々な影響を与えています。

  • 変動金利での借入も多く、利払い負担が増加している企業が多い。
  • 金利上昇とともに借入時の上乗せ金利幅(信用状況が悪化すると拡大)も上昇しており、企業の資本コストは急上昇しつつある。
  • 好景気の恩恵でジャンク(信用リスクの高い)企業が投資適格に格上げされ、有利な条件での借入を増やしているケースもある(ただし、必ずしも正しい信用リスクを反映しているとは言い難い)。
  • 借入金による自社株買入で株価を上昇させていたケースが多く見られる(企業債発行増の主因)。

 投資適格企業であれ、ジャンク扱いの企業であれ、元利の返済が滞りなく行われれば問題ないのですが、直近の市場による見立てはそうではないようです。投資適格債とジャンク債の借入時における上乗せ金利の拡大がその理由です。また、ジャンク債を投資対象とするファンドからの資金流出も懸念されています(図2 投資適格債とジャンク債に対する上乗せ金利の推移、図3 ジャンク債ファンドの価格推移)。

今後の展開

株式市場:
 過去のコメント欄でもご紹介しておりますが、2019年第1四半期決算が今後の相場を占う上で大きな材料になろうかと思われます。2018年の好景気を下支えした減税効果が2019年からは剥落するためです。これについては、それまでに発表される経済指標などから判断して、売買を先行させる動きが出てくるかもしれません。
 また金利上昇に関しては企業の資本コスト上昇を招くだけではなく、配当利回りの観点から株式に対する下値圧力が強まることが予想され得ます(現在のダウ平均の配当利回りは2.20%と、政策金利(2.15%)とほぼ同水準)。

為替市場:
 既にその兆しが確認されていますが、日米金利差が必ずしも米ドル高につながるとは限りません。米国金利上昇(債券価格の下落)の影響が米国株式市場に波及するようであれば、市場は米国売りと判断して為替市場でも米ドル売りが優勢になるかもしれません。

その他:
 FRBは利上げモードにあると上述していますが、「最悪のシナリオへの順応性」までも否定しているわけではありません。FRBは大幅な景気後退時には0%近傍への利下げを行う可能性を示唆しています(米国連邦公開市場委員会議事録  7月31日~8月1日分)。ただし、この2月に経験したVIXショック程度では特段の策を講じないかもしれません。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。