金相場急騰の理由と影響

金相場が大きく上昇しています。7月29日時点の金(スポット)価格は1トロイオンスあたり1,950米ドル前後と2011年9月につけた高値(1,920米ドル)を越え、史上最高値を更新しています。一部では史上初めての2,000米ドル台到達の可能性も報じられており、さらなる金価格上昇への期待感も高まっているようです。

金価格上昇の理由

図1は1トロイオンスあたりの金(スポット)価格の推移を表したものです。2011年に高値をつけて以降、低調に推移をしていた金価格ですが、2019年前半より上昇に転じていました。2020年に入るとその騰勢はさらに強まり、史上最高値を更新するまでに至りました。


なぜ金の価格がここまで上昇したのでしょうか。いくつかの要因が考えられます。

〇安全資産としての需要
世界的に新型コロナウイルスの拡大が続く中で、多くの国が景気後退期を迎えています。ワクチン開発の動きは進んでいますが、根本的な解決に至るにはまだまだ時間がかかりそうです。
また、新型コロナウイルスの発生源や香港治安維持法の成立、南シナ海における領有権などの様々な問題で米中関係は悪化しており、米中双方が総領事館を閉鎖する事態にまで陥っています。
世界トップクラスの経済規模を持つ米国と中国の覇権争いは、日本をはじめ双方と貿易面で結びつきの強い周辺国への影響も計り知れません。
大きなリスク要因が残る中で、株式や社債などのリスク性資産から安全資産として知られる金に資金が流入していると考えられます。

〇世界的な大規模金融緩和
一般的に米国の金利と金価格は逆相関の関係にあると言われており、米国の金利が上昇すると、他の通貨に比べて信用力の高い米ドルの魅力が高まる一方、配当や利子を生まない金の魅力は薄れて金価格が下落する傾向にあります。逆に、米国の金利が下落すると、利回りはないものの金の魅力が相対的に上昇することになります。
図2は米国10年債の利回りと金価格の推移を表したものです。米国が利下げに転じた2019年8月頃から金価格が緩やかに上昇をはじめ、新型コロナウイルスによる景気悪化への対策として米国がゼロ金利を決定したことで、さらにその上昇が加速したことがわかります。
ただし、2020年7月以降を見ると、米長期金利が緩やかな下落に留まっているのに対し、金価格は急劇な上昇を示しており、金利だけではこの価格推移に説明はつきそうにありません。


〇中央銀行による金準備拡大
2018年秋以降、中国の外貨準備高は横ばいながら、金準備高は増加しています(2019年9月:約700億米ドル→2020年6月:約1,100億米ドル)。同様に、ここ数年トルコも金準備を引き上げています。
両国に共通しているのは米国との関係が悪化していることです。米国との関係がさらに悪化すれば、決済に基軸通貨である米ドルを使えなくなるリスクがあるため、他の通貨へ換金しやすい金を買い集めていると考えられます。
政治的な問題が大きくかかわっている以上、早期解決は考え難く、今後も新興国中銀による金需要が続くかもしれません。

そのほか、宝飾品としての金需要など様々な要素が重なり、金価格の大幅な上昇につながっていると考えられます。そして、これらの要素は長期的に継続する可能性もありそうです(例えば、米国は少なくとも2022年末までゼロ金利を続けること明らかにしています)。直近の早急な上昇により目先で調整が入る可能性はありますが、金相場は長期的に上昇が続くかもしれません。


他の貴金属も上昇

金の上昇に伴って他の貴金属にも買い需要が高まっています。

金と同じように古い歴史を持ち、工業用途でも多く用いられる銀は7月中旬以降、金を上回る上昇率を見せ、7月28日には一時26米ドルと7年ぶりとなる高値をつけました。

また、金以上に希少性が高く、宝飾品のほか、自動車の触媒としても用いられるプラチナですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う工業用需要の減少で一時は大きく値を落としていましたが、昨年末の水準付近まで値を戻しています。


金が2,000米ドル近い水準にまで上昇している今、比較的安価な銀や出遅れ感のあるプラチナにも資金が流入するかもしれません。

また、銀やプラチナは金に比べて市場規模が小さく、相対的に値動きが大きくなる可能性もあります。値動きが大きくなれば短期的に収益をあげられる機会もありそうです。

加えて、銀やプラチナの個別の事情により需給面から相場が変動する可能性もありそうです。

銀の価格変動要因

  • 生産地の南米で新型コロナウイルス感染者数が急増 → 鉱山の操業停止の可能性
  • 気候変動対策への関心からソーラーパネル部品としての需要が高まる

プラチナの価格変動要因

  • 他の貴金属と比較した割安感から中国などアジアで需要が急増
  • 排ガス規制強化により自動車触媒としての需要は減少


貴金属に投資をする方法

これらの貴金属に投資をしてみたいと思う場合、貴金属現物を買い付けるという方法に加え、商品先物を買い建てるという方法があります。また、貴金属の価格に連動するETFや投資信託を買い付けるという方法もあります。

また、これらの貴金属にはeワラントを通じて取引いただくことも可能です。以前からお取引が可能だった金やプラチナを対象とするeワラントに加え、8月3日(月)より銀を対象とするeワラント(レバレッジトラッカー)の取り扱いも始まります。eワラントの取引単位は1,000単位ですので、取引価格×1,000が最低投資金額となります。数千円~数万円程度で投資ができ、レバレッジ効果があるので、実際の貴金属相場の変動以上の投資効果も期待できます。

※実際には、金・銀・プラチナ相場に連動することを目的に発行された債券(リンク債)を対象としています。

(eワラント証券)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。