『岸田首相の施政方針演説で見えたもの』

1月17日、第208回通常国会が召集され、6月15日までの150日間の会期で、夏の参院選をにらんだ与野党の攻防が繰り広げられます。会期の延長がなければ、参院選は7月10日の投開票となる見通しです。

さて、衆参両院本会議で、就任後初の施政方針演説に臨んだ岸田首相は、新型コロナ対応として医療逼迫の回避に全力をあげることを表明しました。先の補正予算では医療体制の拡充、ワクチン接種の推進、経口薬の確保、仕事や暮らしを守る支援策などが盛り込まれましたが、最新の知見に基づいた対策を臨機応変に講じるとしており、足元のオミクロン株の感染急拡大を受けて、3回目のワクチン接種の前倒しや在宅・宿泊医療体制の拡充などを進める考えです。また、中長期的観点から、感染症対応体制の強化策として、6月をめどに司令塔機能の強化や感染症法の在り方、保険医療体制の確保などを取りまとめるとしています。

次に、岸田政権の看板政策ともいえる経済再生に向けた「新しい資本主義」については、この春にもグランドデザインと実行計画を取りまとめる考えを示しています。市場に依存し過ぎたことによる不公平な分配で生じた格差や貧困、効率重視による中長期投資の不足、持続可能性の喪失、都市と地方の格差、環境負荷の深刻化が世界的にも問題となる中、持続可能な経済社会の実現に向けた「経済社会変革」を、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって実現していこうという考えです。「成長戦略」と「分配戦略」が弊害を是正するとして、「成長戦略」では「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図っていくとしています。

また、地方との格差をなくす「デジタル田園都市構想」に向けたインフラ整備と規制・制度の見直し、自動運転や自動配送ロボット、ドローンなど新サービスの展開、さらに、マイナンバーカードの利便性改善やサイバーセキュリティー強化、サプライチェーンの強靭化、先端分野の設備投資や研究開発へ支援を行っていくとしています。一方、「分配戦略」では「賃上げ」によって、早期に全国加重平均で最低賃金1,000円以上を目指すとしています。また、「人への投資」を抜本的に強化し、スキル向上や再教育の拡充によって、企業の持続的な価値創造の基盤となり、人材育成を図っていくほか、次世代「中間層の維持」を目標に、世帯所得の向上を図るために男女の賃金格差是正や官民連携を進めるとしています。

加えて、「気候変動問題への対応」として、カーボンニュートラルの目標実現に向けて、具体的な道筋を「クリーンエネルギー戦略」として取りまとめる考えです。また、アジアの脱炭素化に向けた国際的なインフラ整備を「アジアゼロエミッション共同体」で作るとしています。

施政方針演説は「子ども家庭庁」の創設や地域活性化、災害対策、外交・安全保障、憲法改正など多岐に及びましたが、成長戦略や温暖化対策に関しては、アベノミクスやスガノミクスの延長線上であることは、政策の継続性という点では申し分ないですが、これからコロナ禍からの回復が期待される中で、分配による公平性が果たして海外投資家からの評価を得られるのかは疑問が残るところです。とはいえ、成長戦略による社会構造の転換で恩恵を受ける企業も多いとみられ、「国策に売りなし」でテーマ関連物色は今年も賑わいそうです(※本命の見極めが重要ですが)。足元で株式市場は不透明感が強まっているものの、「キャッシュ・イズ・キング」の姿勢で落ち着いてこの波を乗り越えたいところです。


(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。