『IPEF始動で恩恵を受けるのは?』

5月23日、インド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework;アイペフ)の立ち上げに関する共同声明が発表されました。バイデン大統領が主導する形で、13か国が参加した首脳級会議では、インド太平洋地域での持続可能で包括的な経済成長を目指して、地域の課題に取り組んでいくことが確認されました。声明の中ではこの枠組みについて、経済の強靭性、持続可能性、包摂性、経済成長、公平性、競争力を高めることを目標として、これらを通じて、この地域における協力、安定、繁栄、開発、平和に貢献することを目指すとしています。

具体的には4つの柱を掲げ、①包摂的で、自由かつ公正な貿易、②より強靭で統合されたサプライチェーン、③クリーンエネルギー技術の開発、脱炭素化支援、持続可能で耐久性のあるインフラ、④租税回避及び腐敗の抑制をパートナー国間で協議、協力していくとしています。そして、声明の最後には地域経済の連結性及び統合を進める観点から、参加国の共通の利益を促進させるために、さらなる協力の分野を特定していくとしています。

アジア地域では1967年にASEAN(東南アジア諸国連合)が設立され、発足当初の5か国から、現在は10か国に拡大しています。1992年にはAFTA(自由貿易協定)を結び域内経済協力を強化するとともに、2003年にはASEAN共同体の構築を宣言し、民主主義、人権、法の支配、紛争の平和的解決、内政不干渉などの原則に基づいて関係を構築してきました。日本とASEAN各国との間にもEPA(経済連携協定)が2010年に発効しています。貿易額の9割以上で、相互に関税を撤廃(ないしは削減)しています。

他にはASEANと日中韓、豪州などが参加しているRCEP(地域的な包括的経済連携)協定もあります。2012年11月に中国が主導して交渉が開始され、2020年11月に署名、2022年1月に発効されました。この協定は世界のGDP、貿易総額、人口の約3割、日本の貿易総額のうち約5割を占めています。RCEPで日本は約92%の品目で関税撤廃を実現しています。なお、インドは当初、加入を目指していましたが、2019年に交渉を離脱。

そして、当初米国が主導して、締結を目指したのがTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)です。名前の通り太平洋の周辺国11か国が参加して、2018年に発効しました。米国は2017年にトランプ大統領が離脱を発表してからは、日本がリーダーシップをとって、自由で公正な21世紀型のルール(越境EC(電子商取引)や労働・環境対応、国営企業の優遇措置の規制など)に則って交渉を進めてきました。GDPの合計は世界全体の約13%を占め、約95%の高い関税撤廃率を誇っています。2021年には英国や台湾、中国、エクアドルが加入申請を行っています。

なお、今回のIPEFはTPPを離脱した米国が主導する形で、アジア太平洋地域での影響力を強める中国をけん制する意味合いも込められているようです。ウクライナ情勢を受けて、台湾を巡る動きにも緊張感が高まる中、サプライチェーンをめぐる安全保障を早期に確立したい日本や経済面で中国依存が高まっている現状を打開したいバイデン大統領の思惑が一致した形とみられます。こうしてみてきたように、これらアジア地域を中心とした経済連携では、日本が一番恩恵を享受しそうです。同盟国として米国に顔は向けつつ、足先は中国・アジアとの経済連携に向けることによって、コロナ禍からの経済回復を加速させることができるのではないでしょうか。足元の相場は、日経平均が心理的な節目の27,000円を突破したことで、強気派も息を吹き返しています。先行きの見方は依然分かれたままですが、短期的にはリバウンド方向に向かうとの意見が大勢という印象であり、ここでポートフォリオ含めひとまず態勢を整えたいところですね。


(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。