かのうちあやこの「第31回 Japan IT Week【春】」レポート

4月6日から8日、東京ビッグサイトで開かれた「第31回 Japan IT Week【春】」に行ってきた。
「情報セキュリティ EXPO」「ソフトウェア&アプリ開発展」など12の専門展からなる商談のための日本最大級のIT展示会だ。
会場は非常ににぎわっていて、業界の勢いを感じる。そして出展者が熱心に資料を配布しブースへの呼び込みをしていた。

今回は「在宅・リモートワーク支援 EXPO」というのが新設されていて、興味を持って見に行ったが、その部分は出展社が少なかった。非常に広い会場ですべてはとても回れないので私が今回注目したのは「Web & デジタル マーケティング EXPO」と「AI・業務自動化 展」だ。ここ数年で上場した企業が多く、調べていても私には内容がよくわからないことが多かったので見てみたかった。

ラクス(3923)はサービスごとにいくつもブースを出していて、チカラが入っているのがわかる。テレビCMでよく見る「楽々明細」を、実際どんなことができるのか見せてもらった。例えば交通費の清算は本当に簡単にできる。スイカなどの交通系カードのデータをそのまま自分のスマホのアプリに取り込み経費精算ができる。これなら楽ちん。私でもできそうだ。
それでもまだまだ紙で伝票をきってハンコを押すケースも多い。請求書も紙で印刷して封書で送っているのが7割という(昨秋の調査結果)。
今年1月には「電子帳簿保存法」が改正された。PDFで受け取った請求書を紙に印刷して保管することが認められなくなるなどの内容が浸透していないことが同社の昨秋の調査でわかっている。電子帳簿保存法対応とあわせて、受領請求書の処理業務の効率化を支援する「請求書処理支援オプション」を11月にリリースする。今年10月からはインボイス制度も始まる。今が顧客へのアピール時期とみている。

珍しいところではキーエンス(6861)が出展していた。ナビ搭載のRPAシステムの紹介だ。同社で使っていたシステムを商品化して1月に出したのだそうだ。数多い顧客にもアンケートを取ったそうで、実はRPAシステムは簡単にするためなのに、使うのが難しすぎたという。Excelが絡むと途端に大変になる。同じ発注書でも品番が書いてあるセルの場所が違う、結合がしてあるなど細かいことだが、それで認識されなくなってしまっていた。この製品はナビ=説明に従って、文字列を直感的に引っ張ってくればそれでシナリオが出来上がるようになっている。
Excelがやっかいだという話はあちこちで聞いた。Excelを使わなくてもできます、あるいはこれまで通り使ったままでできます、と対応は様々だ。

エイトレッド(3969)は業務効率化ワークフローソフトで先行してきた。中小企業、製造業向けに強いという。社内の各種申請などの「組織として必要な業務」を、電子化によってスムーズに、すばやく行うのが狙いだ。また、書類の処理で出社する必要がなくなるため、コロナ禍で導入は加速しているという。電子化することで管理が楽になり、検索や集計もしやすいそうだ。

ユーザローカル(3984)は SNS分析、ビッグデータ解析やAI業務支援ツールの開発・提供を行っている会社だが、今回はユーザーインサイトというホームページなどのアクセス解析ツールを紹介していた。ホームページというのは、企業が思っている姿とユーザーが見ているものは違うという。せっかくWebサイトを来訪してくれても、企業がぜひ見てほしいと思っている情報にたどり着いてくれないことも多い。お客さんが見ているのはどこなのか、どこまでスクロールして止まってしまったのか、そうしたことをヒートマップで見える化している。

手軽に自社アプリを開発・運営することができるプラットフォームを提供するヤプリ(4168)は、既に導入600社以上になる。前回展示会で見た時は大手の使用事例が多くて驚いたが、今回、活用事例の広がりが見られた。私はアパレルのポイントカードの代わり、ECでの活用をイメージしたが、社内の営業情報の共有などにも使える。ITに詳しくない人にも使いやすいそうだ。また、社員研修や、アルバイトの育成にも使われている。例えばモスバーガーでは、アルバイトさんにアプリで必要事項を見てもらう形にしたそうだ。従来はアルバイトさんを一か所に集めてビデオを見せていた。こうした施策で内部向け紙媒体発行が三分の一になったそうだ。青山学院大学では、学生手帳、掲示板の機能を持たせたアプリをつくった。ヤプリによると、アプリはウェブより滞在時間が長く、見ただけではなく行動に至った率が高く、使用金額が高い。「オムニチャネル戦略」に効くらしい。

入り口が多様化しており、アプリが便利、ウェブが楽だ、といっても、メールなども業種によって捨てられない。
シャノン(3976)では、メールでまず情報をだして、それが届いていなければショートメッセージ、さらにだめなら紙媒体DMといったマーケティングを自動で行う仕組みを提供している。
自動化やマーケティングの工夫が求められているのは、そもそも人間の営業さんが足を使って稼ぐというのが人手不足で難しくなっていたから。そこへ、コロナで対面の営業が難しくなり、セミナーが開けなくなるなどして状況を加速させた。テレアポもできない。コロナでオフィスにいないし、電話にも出ないからだ。すると、商談が増えない、営業さんが売上を作れないということで、それなら営業の前段階、マーケティングを強化しなくてはならなくなったのだそうだ。10年前の米国の調査でも、営業に会う前に顧客が買うかどうかは68%決まっているというのがある。事前にネットで情報収集できて買うかどうかの気持ちは決まっているのだそうだ。現在なら情報が増え、もっと比率は上がっているだろう。
今回ブースでは子会社ジクウのメタバース、バーチャルイベントが展示されており、人が集まっていた。

Sansan(4443)では名刺管理ソフトの草分けの強みを活かしたいとしていた。「コンタクト機能」で担当者が変わっても案件を引き継げるよう、どんな会合をしたかなどを記入できる。時系列で残すことができ、わかりやすい。DX関連の問い合わせは増えているそうだ。

ジーニー(6562)でも、営業さんの案件管理、引き継ぎの話題がでた。「ダメな営業をなくします」という刺激的なタイトルを掲げている。属人性が高くないですかと聞いてみた。「スーパー営業マン」はいるけれど、そういう人が必ずやっていることがある、それをみんなでできるようにしようというのが営業支援システムの役割だそうだ。また、案件の進捗状況を営業さんは出したくないらしい。上司にせっつかれたりするかららしいが、進捗状況をつかむことはマネージメントにとって必要なことだ。ツールを使えば簡単に画面上で進捗状況を申告できる。1段階進んだ、とドラッグするだけだ。
営業支援システムの大手は米国セールスフォースドットコムだが、それに比べてシンプルで、格安なのが売り。そして強みは一気通貫のサービスだという。

営業支援、マーケティングコンサル、業務自動化を手掛けている会社さんは多い。ちょっと意地悪だが他社さんとの差別化はどこですかと聞いてみた。するとそれぞれに手軽さ、直感的な操作性などをあげてくれた。一貫してできる、ほかのシステムを使わなくていいこともある。また、ここまでの実績も重要だそうだ。そして初期費用が低めの設定など価格も競争力のひとつらしい。 TVCMをよく見かける広告費の割合が高そうな業界。今が顧客の囲い込みの時期なのかもしれない。マーケットはどう判断するのか。株価は小型株売り、グロース売りにも巻き込まれてさえないところが多いが、ホワイトカラーの自動化やクラウドの利用は時代の流れで不可逆的なものだろうから、こうした業界からどんな企業がぐんぐん伸びていくのか、楽しみでもある。


(フリーアナウンサー / 証券アナリスト かのうち あやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。