タカに化けたハト?

1月25日、26日に今年最初のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、市場の大方の予想通り、現状の政策維持が決定されました。しかし、会合後の声明でパウエル議長はインフレ率が40年ぶりの高水準となる中で、「利上げは間もなく適切になる」とコメントし、次回3月会合で、事実上のゼロ金利解除に踏み切る方針を示しました。3月までに国債などの資産購入を通じた量的緩和を終了して、2018年12月以来の利上げを実施し、長らく続いた金融緩和からついに引き締めへと転じる見通しです。

また、これまでの大規模な量的緩和で膨張したFRB(米連邦準備理事会)の総資産、およそ9兆ドル(約1,000兆円)を縮小することも表明されました。いわゆるバランスシートの縮小(QT)は利上げ後に開始され、再投資額を調整する形で実施されることになりそうです。議論の内容は現地時間2月16日公表(日本時間17日午前4時)の議事要旨を待たなければなりませんが、新型コロナウイルスのオミクロン株の世界的拡大が続く中で、経済活動の正常化による需要拡大、原油価格の上昇などによるインフレ率の上昇をどのようなスケジュール感で抑制しようと考えているのかが注目されます。

バイデン大統領から再任の意向が発表された昨年11月下旬以降、パウエル議長はそれまでのインフレは一過性との見方から、長期的なインフレへの警戒感を示すとともに、それまで比較的マーケットフレンドリーだったコメントも、マーケットに対して警戒感を意識させるタカ派寄りのスタンスに転じたように見えます。今回の声明が市場に与えたインパクトは予想外に大きかったようで、米10年物国債の利回りが0.10%の大幅上昇となると、ドル高が進み、NYダウは続落、NASDAQも下落しました。しかし、実は米国本土よりも影響が大きかったのは、先物市場にまとまった売りが出た東京市場の方で、日経平均は800円以上の下落となりました。

加えて、次回の会合から新たな理事2名を加え、7人のFRB理事の定員枠が埋まる見通しです。米上院銀行委員会のブラウン委員長はパウエル議長の再任に関する委員会採決を2月15日に実施する予定で、バイデン大統領が副議長に指名したブレイナード理事とサラ・ラスキン氏、理事に指名したリサ・クック氏、フィリップ・ジェファーソン氏の承認採決も同日に行うとしています。これに先立って、3日には上院銀行委員会の指名承認公聴会が行われ、副議長候補のサラ・ラスキン元財務副長官と理事候補のミシガン州立大学教授のリサ・クック氏、デビッドソン大学副学長のフィリップ・ジェファーソン氏が証言に立ちました。三氏とも事前の予想ではハト派的な見解を示すのではないかと見られていましたが、「インフレ抑制が最優先課題」(ラスキン氏)、「高インフレは持続的な景気拡大への重大な脅威」(クック氏)、「インフレ率を目標とする水準まで低下させなければならない」(ジェファーソン氏)などと、インフレ抑制を重視するややタカ派寄りの姿勢を見せました。2022年のFOMC投票権者の顔ぶれを改めて見ても、タカ派寄りのメンバーが増えたことがわかります。

3月15日、16日に開催される次回FOMCでは、利上げの時期と幅、バランスシート縮小スタートのタイミングなどが示されるか注目されていますが、そもそも3月会合で決定される利上げ幅が0.25%なのか、0.5%なのかで、マーケットの反応も変わってくるでしょう。足元で減速感のある経済指標や上昇が続く原油価格動向、オミクロン株によるサプライチェーンの再度の停滞など、不透明要因も多く、会合までマーケットは疑心暗鬼の展開が続く可能性が高そうです。実際、ハイテク・グロース株が短期的にリバウンドを見せる場面もあるとはいえ、全体感としてはやはりバリュー株の動きが強いという状況もそうしたマーケットの不安感を映している面があるのではないでしょうか。安易な打診買いで大きな傷を負うことのないように、引き続き慎重に相場の流れを読んでいく必要があります。

(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。