「銀行株」と言えば、バブルの頃は花形業界であり、実際に株式市場でも相場を牽引する代表的な業種でした。
しかし、いまやどうでしょう?
バブル崩壊以降、不良債権処理が長引き、いつの間にか国際的競争力を失い、頼みの国内業務も人口減と長引くデフレによりジリ貧状態。その結果、地方銀行の死活問題が浮き彫り化し、最近は地銀再編を目的とした合併・経営統合などが相次いで発表されています。
では、今後の展望はどうでしょうか?このままジリ貧でお先真っ暗状態なのでしょうか?
「いやいや、銀行株は配当利回りも高いし、不景気になろうとも、収益構造が明確だから営業黒字はきちんと毎期確保できる。だから安心感がある。」と考えて、銀行株を長年に渡って保有している方も多いかと思います。
そこで今回、銀行株は果たして買いなのかどうかを、検証してみたいと思います。
金融緩和以降の株価の推移は?
下図をご覧ください。これは2011年1月~2021年1月の約10年間における、銀行株のパフォーマンスの推移を表しています。2010年12月より、日本銀行は更なる金融緩和を目的として、株価指数ETFの買入政策を始めており、その時期とも丁度重なるため、その事実も重ねた上で、チャートを見ていただければと思います。

如何でしょうか?
良かれと思って日本銀行は量的緩和を行ったのですが、その結果直近の10年間で、皮肉にもTOPIXに対して100%を超えるアンダーパフォームとなってしまいました。
原因としましては、日本の銀行業の構造的な問題も勿論あるかと思いますが、最も影響を与えた要因はやはり量的緩和政策により正常なイールドカーブが消滅してしまったことかと思います。
イールドカーブが消えた!?
下図をご覧ください。
これは、短期金利を1年債利回り、中期金利を5年債利回り、長期金利を10年債利回り、超長期金利を30年債利回りとして定義し、それぞれの金利の1年債利回りとのスプレッドを時系列にプロットしたものになります。

2011年時点で長短金利スプレッドが100Bps以上存在していましたが、足元では、17Bps程度しか存在していません。これでは、企業・個人の借入ニーズが乏しい中、国債運用で収益を稼ぐしかなかった銀行にとっては、非常に厳しい現実であると言わざるを得ないでしょう。
長期金利は個人の住宅ローン金利などの指標となる金利ですから、日本銀行としても一旦下げてしまったものを再び上げることは、容易ではないでしょう。悪影響の方が大きい可能性も十分あり得るからです。
従って、銀行の資金運用難という問題は依然続くものと考えられるでしょう。
しかしその一方で、30年債の利回りには、変化の兆しも出てきました。一時、50Bps割れをしたスプレッドでしたが、足元では、80Bps近くまで戻してきています。コロナショックの影響で大幅に歳出が増えた予算に加え、相次ぐ多額の補正予算案などで、長期的な財政悪化懸念が意識された結果、日銀が買いオペによって金利を操作しづらい30年債の部分で金利が上昇しているものと考えられます。
さすがに、銀行としてもリスク管理上「じゃあ明日から、30年債を買いまくろう。」とはすぐにはならないかと思いますが、ひとつの運用手段が増えたという意味で、最悪期は脱したと言っても良いかもしれません。
更なる選択肢も出てきた?
下図をご覧ください。
これは、日米欧における長短金利スプレッドの推移を表したものになります。

日欧では依然スプレッドが無い状態が続きますが、米国では10年債利回りが急上昇しており、足元では長短金利スプレッドが100Bpsを超えてきております。これは2017年以来のことになります。市場では長期的な金利上昇が織り込まれつつあると言えるかもしれません。
うなってくると、日本の銀行勢にも、依然スプレッドが無い日本市場で運用するよりも米国債で運用しようとする動きが出てくるでしょう。
しかし、その場合為替変動リスクが当然出てくるわけですから、いきなり全部というのは難しく、徐々にシフトしていく流れになるでしょうが、銀行業界からすれば明るい兆しとも言えるでしょう。
今後の銀行株は?
冒頭申し上げたように、私も銀行株は正直大好きです。買っていてどことなく安心感があります。PBR(株価純資産倍率)の低さが、それを物語っているとも言えるでしょう。
しかし、現実は今まで見てきたとおりです。日本銀行が今すぐに金融政策の基本方針を変更するとは到底思えませんから、銀行業界における氷河期は今後も続くことが予想されます。
ただ、その一方でちらほらと最悪期は脱した感が出てきているのも事実です。
足元の株価水準でも十分安いとは思いますが、何かしらの短期的な株価クラッシュが起き、連れ安で銀行株がこれ以上下がるようであれば、長期目線でコツコツと拾っていくことも面白いでしょう。
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* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。