昨日の米国市場で大きくハイテク株が調整した。主要3指数の下落率は、ダウが1.55%、S&P500が1.66%であったのに対して、NASDAQは3.02%とひときわ大きなものとなったが、この「下落率3%」という数字は、そうそう示現するものではない。
黒田第2弾バズーカが発動され、日本株が再度大きな上昇を辿り始めてからちょうど丸4年が経過したが、この間、NASDAQが3%を超える日利のマイナスを計測したのは12回、ちょうど1年に3回示現した計算となるが、今年は昨日の下落を含めて5回もこの下落率を記録している。(因みに、ゴルディロックス相場と言われた昨年は一度も3%を超える下げはなかった。)
米国株式の主要3指数が、直近で史上最高値を奪取したのは、NASDAQが最も早くて8月(8月29日)、S&P500が9月、そしてダウが10月であったが、このNASDAQが史上最高値を記録した日から昨日までの指数下落率を計算してみると、ダウが4.2%、S&P500が7.5%であるのに対して、これまで相場をけん引してきたNASDAQのそれは13.3%となっている。
決して、ダウの小幅な下落率をもって、「米国株はそれほど傷んでいない」と言える状態ではないことが分かる。
個別銘柄の下げはさらにきつい。
アップル株の直近の下落はよくクローズアップされるが、当該期間の下落率を見てみると、アップルが16.6%であるのに対して、これまで共に相場を引っ張ってきたアルファベット(旧グーグル)が18.4%、アマゾン・ドットコムが24.3%、そして、本日、マーク・ザッカーバーグCEOが、幹部社員を対象とした会議で、「今は、『戦時下』である」と“激を飛ばした”フェイスブックに至っては、25.2%と、25%以上の下落となっている。
11月は恐い。特に、10月が下げたときの11月は恐い。
先月までの10年間の月利を計測してみると、11月は7回上昇し、3回下落している。“勝率”としては決して悪くないのだが、過去10年間で、11月と1月は、8回もその前月の騰落(上昇・下落)と同じ動きとなっている。
この“奇妙な連動性”の背景にあるものは、ヘッジファンドの決算であると考えている。
世界的に見て、ヘッジファンドの決算が最も多いのが11月であり、45日ルールとも呼ばれる一定期間のプレ・ノーティス(事前告知)によって、そのファンドの購入、解約が行われ、その資金フローに則した動きを、ファンドは10月から行うことになる。そして、その動きは11月まで続くのだ。
今年の10月は無論、主要3指数ともに下落となった。その後、今月にはいり、リバウンドの動きで一時、ダウが4.3%、S&P500が3.8%、NASDAQが3.6%、10月末よりも終値ベースで上昇する場面もあったが、昨日で3指数ともに月利がマイナスとなってしまった。
例年、日本株においては、3月決算銘柄の第2四半期決算が発表されたのを受けて、11月後半からは、配当利回りの高いバリュー株や好業績の小型株が外国人投資家によって物色される傾向にあるが、現在のところ目立った動きは出ていないように感じる。まだ、米国市場における現物の換金売りが続いている段階ということであろう。これがひと段落する頃、現在も高位であるNYSE全体の出来高が落ち着くことになると思われる。そのため、この米国市場の出来高推移に注目している。
(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)
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