4-6月期GDP

8月17日に日本の2020年4-6月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表され、物価変動の影響を除いた実質GDPは前期比で7.8%の減少となり、この年率換算は27.8%の減少と、戦後最悪の数字となった。また、これにより、日米欧の4-6月期のGDPが出揃ったことになるが、年率換算の減少率は、米国が32.9%、英国が59.8%、ユーロ圏19か国で40.3%といずれも非常に厳しいものとなっている。

ただし、これはあくまでも年率換算の数値であり、今回のGDPが前年同期比でどのくらい落ち込んだのかを測るため、昨年4-6月期を100として、その後の前期比の増減率を掛けて概算値を求めると、その値は89.9となり、日本の実質GDPは1年間で10%程度金額ベースで減少したことが分かる。しかしこの減少率は、米国の実額比較の9.5%とほぼ同じ水準であり、ドイツの11.7%、フランスの19.0%、スペインの22.1%などに比べればまだ小さい方と言える。他国が今回で2四半期連続のマイナス成長であるのに対して、日本は消費税率再引き上げの影響から3四半期連続でマイナス成長となったことが取りざたされたが、前年同期比の比較では決して相対的に劣るものではない。

内容を見てみると、実質GDPの前期比減少率7.8%のうち、「内需」(国内需要)の寄与が4.8%(の減少)、「外需」の寄与が3.0%(の減少)となっているが、外需の構成項目である輸出は前期比18.5%の減少、輸入は0.5%の減少となっている。また、需要項目である個人消費、設備投資、そしてこの輸出についても、昨年4-6月期を100として前期比を掛けて計算してみると、(GDPの半分以上を占める)個人消費は88.9、設備投資は95.6、そして、輸出は76.9と、輸出の落ち込みが鮮明となる。

輸出の落ち込みについてもう少し見てみると、前期比の減少率18.5%に含まれる財輸出は、海外のロックダウンの影響もあり19.2%の減少となっているが、さらに大きな81.2%という落ち込みを示したものがある。「非居住者家計の国内での直接購入」がそれであり、訪日外国人のインバウンド消費は、このように輸出にカウントされるのだが、これが前期比で8割以上減少したことが、輸出の前期比を2.3%落ち込ませている。寄与度がその六分の一程度と仮定すると、GDPの年率換算減少値27.8%のうち、1.5%程度は訪日外国人消費の減少が要因という計算だ。

日本の鉱工業生産はGDPの輸出の増減との連関が高く、その輸出は世界の半導体出荷額とさらに高い連関があるとされている。
インバウンド消費の落ち込みを書いたが、やはり重要なことは世界の半導体需要の高まりなのである。この点で、今回の4-6月期GDP統計において、中国が前年同期比で3.2%のプラスとなったことに明るさを見出したい。また、世界半導体市場統計(WSTS)は、来年2021年の市場規模を4522億ドルと、2019年との比較で10%近く増加すると見込んでいる。日本企業の半導体主要原料のシェアは5割を超えるとされている。4-6月期の景気を底として、7-9月期は自律反発的な急回復となっても、10-12月期以降には不透明な要素が多いと、既に不安視する向きもあるが、先のことは何も分からない。分からないからこそ、きちんと世界半導体出荷額をモニタリングしていくという姿勢が必要なように思える。

[出所:日本:内閣府、米国:商務省、欧州:欧州委員会統計局(Eurostat)、中国:中国国家統計局のGDP資料数値をスプリングキャピタル社が加工]


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

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