FinTechと法律①仮想通貨(1)ビットコイン

仮想通貨にはさまざまな種類がありますが、今回は仮想通貨の中でも最も有名なビットコインを例として、どのように法律や法規制が適用されるかを説明したいと思います。

ビットコインとは、2009年に運用が開始された仮想通貨であり、通貨単位としてビットコインが使用されます。つまり、「ビットコイン」は「円」や「ドル」といった通貨単位と同じように用いられ、実際に円やドルなどの法定通貨に換金することができます。このビットコインと法定通貨とは変動相場となっており、2017年2月下旬での1ビットコインは概ね11万円~13万円台を推移しています。

ビットコインは、法定通貨と同様に、商品の代金の支払いに使うことができるほか、他人に送金することができます。またウォレットと呼ばれる仕組みを通じて貯蔵することもでき、これは預金に近い行為といえることでしょう。また、上記のようにビットコインが法定通貨に換金できることから、外国為替証拠金取引(FX取引)と同様に投資の対象としても積極的に利用されています。

このように、法定通貨とほぼ同様の機能を果たすといえるビットコインですが、法定通貨と異なるのは、すべて電子的に記録・管理されるものであること(つまり、物理的な紙幣・貨幣といったものが存在しないこと)と(中央)銀行のような特定の中央管理者が存在しないということにあるといってよいでしょう。この点について詳しく説明しようとすると、ビットコインの仕組みについての詳細な説明が必要になりますので省きますが、極めて単純化すると、ビットコインによる取引(決済)は個々の取引記録(決済の履歴)が綿々と電子的な取引記録(データベース)に記録されることで成り立っており、こうした個々の取引記録を一貫した電子的な取引記録として記録する作業はネットワークに参加する任意の者によって行われます。

それでは、こうしたビットコインを保有している状態は、法律的にはどのように評価されるでしょうか。モノと同様に、ビットコインを所有しているといえるのでしょうか。この点については、裁判所の判断がありますので、紹介したいと思います。

Mt. Goxというビットコインの取引所を営んでいた会社が2014年に破産した事件をご記憶の方も多いと思いますが、このときにMt. Goxにビットコインを預託していた顧客が、Mt. Goxの破産管財人に対してビットコインの返還を求めて東京地方裁判所に訴訟を提起しました。この訴訟の判決(東京地方裁判所判決平成27年8月5日)では、所有権の対象は有体物に限られることなどから、ビットコインを所有することはできないと判断され、ビットコインの返還は認められませんでした。このように、法律的にはビットコインを所有することはできないといってよいでしょう。したがって、このMt. Goxのケースのようにビットコインの預託先が倒産した場合には、ビットコインを預託していた者はビットコインの所有が自分にあるとしてその返還を求めることはできず、通常は一債権者として破産手続において配当を受ける可能性があるにとどまると考えられます。また、ビットコインの所有が認められない結果、ビットコインが不正に送付された場合においても、ビットコインを保有していた者は不正な送付を受けた者に対してそのビットコインの返還を求めるということはできない、ということになります。

もっとも、ビットコインの所有が認められないとしても、ビットコインの保有は法律上保護される利益であると考えられますので、上記のようにビットコインが不正に送付された場合には、ビットコインの返還ではなく、不正な送付を行った者に対して不法行為として損害賠償を求める(つまり、法定通貨によるビットコインの価値相当額の支払いを求める)ことは認められる余地があります。

次回は、ビットコインに対して新たに導入される予定の法規制について説明したいと思います。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 樋口 航)

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