FinTechと法律①仮想通貨(2)法規制

従前はビットコイン等の仮想通貨に対する法規制はありませんでしたが、前回触れた2014年のビットコイン取引所を運営していたMt. Goxの破綻や、仮想通貨のマネーロンダリング・テロ資金供与への悪用の懸念等を背景とした世界的な規制強化の流れを受けて、2016年に資金決済に関する法律(資金決済法)と犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)が改正され、2017年4月1日から施行されています。今回は、この2つの法律の概要を説明します。

資金決済法は、プリペイドカードや電子マネーなどに関する規制を定めた法律です。改正によって、新たに仮想通貨を扱う者は金融庁・財務局への登録が必要となり、金融庁・財務局の監督に服することになります。

では、どのような業務を行っている者が登録が必要になるのでしょうか。資金決済法では、以下の3つの行為を業として行うには登録が必要とされています。

①:仮想通貨の売買または他の仮想通貨との交換
②:①に掲げる行為の媒介、取次ぎまたは代理
③:その行う①・②に掲げる行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること

より具体的に考えてみます。

まず、ビットコインの売買または交換を行っている販売所は、上記の①の行為を業として行っているとして、登録が必要になります。

次に、ビットコインの取引所は、上記の②の行為を業として行っているとして、登録が必要になります。

また、最近では、ネットショッピングなどで購入者と店舗との間の決済を代行する業者が多数存在しています。店舗側は、こうした決済代行業者と契約すれば、決済代行業者を通じて各種クレジットカードやコンビニ決済などを一括して取り扱えるというメリットがあります。決済代行業者の中にはビットコインでの決済も取り扱っているところがあります。こうした決済代行業者は、購入者が支払ったビットコインを受領し、それを円に交換して店舗に引き渡しているところが多いと思われます。こうした行為を行う決済代行業者は、上記①の行為を業として行っているとして、登録が必要になる可能性が高いと考えられます。

さらに、ビットコインのいわゆるオンライン・ウォレットのサービスを提供しているウォレット業者はどうでしょうか。この場合、ウォレット業者は仮想通貨の管理をしていますので、上記③の行為のうちの「利用者の…仮想通貨の管理」はしているといえますが、登録が必要になるのは、そうした管理が「①・②に掲げる行為に関して」行われている場合に限られます。したがって、ウォレット業者が仮想通貨の売買・交換やその媒介・取次ぎ・代理を行っていない場合には、登録は不要と考えられます。

こうした登録をするためにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、そのうち注目すべきは、資本金の額が1,000万円以上であることと、純資産額がマイナスではないことという要件です。つまり、一定の財産的な基礎がある者のみが登録できる仕組みとなっています。

また、登録された業者は、公認会計士または監査法人の監査等が必要とされ、財務書類の適正さが要求されていることも特徴的です。さらに、登録された業者は、顧客の財産を分別管理するなどの顧客保護のための義務を負うほか、金融庁・財務局の立入検査や業務改善命令の対象になります。

以上が改正された資金決済法の概要ですが、資金決済法の改正と同時に犯罪収益移転防止も改正されました。犯罪収益移転防止法は、仮想通貨を利用したマネーロンダリング等を防止することを意図しており、登録された業者はその顧客の本人確認を行う必要があります。

以上のとおり、2017年4月1日以降は、仮想通貨を取り扱う者に登録制が導入され、当局の監督を通じて利用者を保護する仕組みが導入されたといえます。ビットコインの利用者にとっては、以前より安心した取引環境となることが期待されます。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 樋口 航)

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  1. FinTechと法律①仮想通貨(4)ICOを巡る法規制の動向 – eワラントジャーナル