FinTechと法律②資金決済法と「ポイント」

 いわゆる「ポイント」は広く普及しています。典型的な例としては、個別のお店がスタンプカードやポイントカードを発行し、購入額に応じて利用者にスタンプやポイントを付与し、利用者はその分の割引を受けられる、といったものです。家電量販店のポイント、クレジットカードのポイントや航空会社のマイレージなどもポイントサービスの一つです。

 ポイントの発行に関係のある法律は、「資金決済に関する法律」です。資金決済法と呼ばれていますので、以下では資金決済法といいます。なお、資金決済法は、仮想通貨を取り扱う業者に関する規制も定めている法律ですので、比較的守備範囲の広い法律です。

 「ポイント」といっても、実に様々なポイントサービスがありますので、資金決済法の適用があるかどうかは個別のポイントサービスの内容次第ということになりますが、資金決済法の適用があるかどうかという点において最も重要なのは、ポイントの発行に対価の支払いが必要かどうかという点です。すなわち、ポイントの発行にお金などの対価を支払う必要があるものは、資金決済法で定められた「前払式支払手段」に該当する可能性があり、したがって前払式支払手段の発行に関する資金決済法の規制に従う必要がある可能性があります。他方で、ポイントの発行に対価を支払う必要がないものについては、資金決済法は適用されず、またその他の法規制もかからないということになります。

 この資金決済法の「前払式支払手段」について、もう少し詳しく説明します。資金決済法上の前払式支払手段の定義はやや難しいのですが、簡略化すると、①金額又は商品・サービスの数量が記載・記録されること、②記載・記録されている金額又は商品・サービスの数量に応ずる対価が支払われることにより紙面・カード・番号等が発行されること、③発行された紙面・カード・番号等が対価の弁済に使用されること、という要件を備えるものをいいます(ただし、例外として、上記の要件を満たす場合でも、その使用期間が発行の日から6ヶ月以内のものは前払式支払手段には当たりません。)。前払式支払手段の身近な例は、デパートの商品券、ビール券その他のギフト券やSuicaなどの電子マネーです。携帯電話が普及する前には一般的だったテレフォンカードも前払式支払手段です。また、実際に紙面やカードが発行されないもの、たとえばネット上でのみ使用されるものであっても、上記の要件を満たすものであれば、前払式支払手段に該当します。

 こうした前払式支払手段を発行する場合には、資金決済法に基づき、(一定の場合には)管轄する財務局に届出をする義務や定期的な報告を行う義務が課せられるほか、未使用残高が1,000万円を超える場合にはその半額以上を供託所に供託しなければならないといった義務を負うことになります。

 世の中にあるポイントの多くは、商品やサービスの購入に応じて(いわば景品・おまけとして)ポイントが付与されるものであり、その発行を受けるために対価を支払うものではないと思われます。したがって、こうしたポイントは前払式支払手段には該当せず、資金決済法の規制その他の法規制はかかりません。しかし、ポイントという名称を使用するものであっても、ポイントを取得するためにお金を払う必要があるような場合には、前払式支払手段に該当する可能性がありますので、資金決済法との関係で注意が必要です。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 樋口 航)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の所属する組織およびeワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。