FinTechと法律③電子マネーに適用される法律

 最近では、コンビニ以外の多くのお店でも電子マネーが使えるようになりました。電子マネーとしてまず思い浮かべるのは、Suica、PASMOなどのいわゆる交通系電子マネーのほか、楽天Edy、nanaco、WAONといった電子マネーでしょう。こうした電子マネーは、事前に現金をチャージして使う「前払型(プリペイド型)」です。

 他方で、QUICPayやiDといった「後払型(ポストペイ型)」の電子マネーも普及しています。こうした「後払型」では、チャージが不要で、利用した分の代金が後日クレジットカードの利用代金と一緒に請求されるというものが一般的です。

 電子マネーに適用される法律は、その電子マネーが前払型か、後払型かによって異なります。

 まず、前払型の電子マネーは、原則として「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」といいます。)で定められた「前払式支払手段」に当たり、資金決済法が適用されることになります。その結果、電子マネーの発行者は、登録は不要ですが、未使用残高が1,000万円を超える場合にはその半額以上の保証金を供託所に供託しなければならないという義務を負うことになります。このほかにも、(一定の場合には)管轄する財務局に届出をする義務や定期的な報告を行う義務が課せられるほか、電子マネーの利用者に一定の情報提供をする義務などの各種義務が課せられます。

 次に、後払型の電子マネーは、割賦販売法で定められた「包括信用購入あっせん業者」として、割賦販売法が適用されます。「包括信用購入あっせん業」とは聞き慣れない言葉ですが、ざっくりと説明すると、商品やサービスを購入できるカード等を利用者に交付し、利用者がそのカード等で購入した代金を立て替える事業を指します。典型的な例は、クレジットカードを発行することです。つまり、後払型の電子マネーの発行は、法律上はクレジットカードの発行と同じであり、クレジットカードの発行と同じ規制に服することになります。

 具体的には、後払型の電子マネーの発行者は、経済産業省の登録簿に登録される必要があり、その登録に際しては2,000万円以上の資本金を有すること等の財産的な要件を満たす必要があります。また、後払型の電子マネーの発行者は、利用者に対して取引条件を明示する義務や利用者の支払可能見込額の調査義務等の利用者保護のための各種の義務が課せられます。さらに、後払型の電子マネーの発行者も、前払型の電子マネーの発行者と同様に、保証金を供託所に供託しなければなりませんが、その金額は少なく、主たる営業所につき10万円、その他の営業所につき5万円です。

 以上をまとめると、以下の通りとなります。

 このように、電子マネーの場合には、前払型か、後払型かによって適用される法律が異なることに留意が必要です。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 樋口 航)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の所属する組織およびeワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。