FRBは今回の株式市場下落には介入しない?

 本稿では下げ足を早める米国株式相場と市場から利下げを催促されているFRBの対応についてお伝えしたいと思います。

これまでのFRBの金融市場に対する基本姿勢

 FRBの使命は物価と雇用の安定の2つです。この使命の下、FRBは伝統的金融政策(政策金利の誘導)に加え、リーマン・ショック以降は非伝統的金融政策(ほぼゼロに近い政策金利の維持と資産の買い入れ)を継続することで物価と雇用を下支えしてきました。株式市場はこのFRBによる実質的な市場介入によって、順調に上昇基調をたどることができたと言ってもよいでしょう。

 そして、米国景気の堅調な拡大基調を背景に、直近の2年間は、金融政策の正常化(段階的な利上げと買い入れ資産の売却)へと転換を図っています。

株価下落はFRBのスタンスを変更させうるか?

 この10月来、米国株価相場は大きく下落していますが、FRBが株式市場安定のために金融政策を変更すること(利下げ)は目先考えにくいと思われます。その理由として、まずFRBの2大使命(雇用と物価)に関する限り、現在は過去に例のないほど安定している点が挙げられるでしょう。また、今回こうした株価の下落を受けて金融政策を変更(利下げ)を行ってしまうと、12月18~19日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ判断を真っ向から否定するものとも受け取られかねません。

 中央銀行の金融政策は、その使命や過去の経緯と整合性を保つことも重要ですから、過去にいくつかの例外はあるものの、今回の株式市場の下落局面を受けた利下げは当面考えにくいと判断する次第です。

 これまでの当局者のコメントや公的文書からも、FRBが金融危機のリスクに警戒感を示しつつも、現在の金融市場を取り巻く環境に自信を持っていることが窺い知れます。

参考1 パウエル議長コメント(ジャクソンホール会議、2018年8月24日)

  • 金融危機に直面した際などは、必要な手段を全て行使する(例えばリーマン・ショック以降の非伝統的(超緩和的)金融政策)。
  • その一方、過去10年に及ぶ規制改革(主に銀行部門の資本規制)により金融システムは堅牢さと回復力を大幅に向上させている。

参考2 金融安定報告書(Financial Stability Report、2018年11月28日公表)

  • 金融危機の発生リスクについては、特に投資家のリスク寛容度の膨張(※筆者注:リスクの取り過ぎ)により、資産価格の評価リスク(※筆者注:金融商品価格の下落リスク)の拡大が市場リスクとして顕在化することが懸念される
  • 一方、金融システムについてはバーゼル規制(銀行部門の資本規制)強化・進捗によりリスク耐性が格段に向上している

 これに対し、株価を重視するトランプ米大統領は、「(株価にとってはマイナスとなる利上げ維持の姿勢をとる)FRBは米国経済にとって唯一の問題だ」と発言していますが、大統領にはFRB議長の指名権こそあれ、正当な理由無く(心神耗弱、業務懈怠など)恣意的に罷免することはできず、FRBの金融政策を大きく変更させうるほどの圧力にはならないでしょう。

 ただし、自らが採ってきた金融政策に自信を深めるFRBの姿勢は、裏を返すと金融市場が恐慌状態(最終的に資金の流動性が憂慮されるような状態)となったり、FRBの二大使命(物価と雇用の安定)に支障をきたさない限り、株式市場の下落から距離を置くことを表すのかもしれません。

 現在、米国株式相場は下落基調にありますが、FRBが今回の株価下落を市場による自立反転であり、金融システムを揺るがすほどのインパクトはない(=金融危機にはつながらない)と見ているとすれば、下落トレンドはしばらく続く可能性があります。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。