FRB vs日本銀行!日米欧のバランスシートは今後拡大するのか?縮小するのか?

FRBは6/15にFF金利の誘導目標を0.75%引き上げる発表をしました。次回7月の会合でも0.5%~0.75%の利上げが予想されるなど、急ピッチで利上げをすることにより、物価の急上昇を抑え込もうと躍起になっています。

しかし、金利は引き上げるものの、バランスシートの縮小(市場から資金を吸い上げることと同義)は一向に進む気配がありません。

下の図1、図2をご覧ください。
これらは、日米欧のマネタリーベースの推移を、2013年7月から月次ベースで表したものになります。
図1を見ると、2021年後半をピークに徐々にではありますが、合計の残高が減ってきているようにも見えます。しかしこれは為替レートの影響が大きく、実際に図2を見ると、大きく残高を減らしているのは日本だけであることが分かります。
足元ドル円相場が6カ月前に比べて、約20%もドル高方向に動いているため、日銀のドル建てのバランスシートがあたかも大きく縮小したように見えています。

このことは下の図3からも明らかです。
図3は2013年7月末のマネタリーベースの金額を100として、足元までの推移を国別に表したものになります。
欧州と日本は今なお、マネタリーベースは増え続けているのが実情です。
肝心の米国はというと、徐々に減ってきているとはいえ、今までの増えた分を考えると、微々たる金額だと言えます。

そもそも、現在の金融緩和は、金利の引き下げ⇒大量に国債を買うことによるバランスシートの拡大、という順序で行ってきているのですから、これを引き締める方向に戻すのであれば、バランスシートの縮小⇒金利の引き上げ、という順序で金融引き締めを行っていくのが、本来の道筋と言えます。

では何故そうしないのか?

やはり、資金の供給量を減らすことが金融市場へ大打撃となることを懸念しているためかと思われます。
金利引き上げ自体も資金を借り入れる際のコスト増になりますから、金融市場への影響は大きいですが、市場に出回るマネーの量そのものを減らす影響というのは、金利引き上げの場合とは比べ物にならない大打撃を金融市場にもたらす可能性があります。

そのため、日銀はもちろんのこと、近々利上げを予定しているECBも「金利は今夏引き上げる予定だが、バランスシートの縮小は当分先になる。」との見解を示しています。

FRBのバランスシート縮小が始まる!

とはいうものの、FRBは5月のFOMCにて6月1日よりバランスシートを縮小させる決定を発表しました。
今後、財務省証券は月間300億ドル、政府機関債と住宅ローン担保証券は175億ドルを上限に縮小されます。そして市場に影響がさほど無いようであれば、3か月後には財務省証券は月間600億ドルに、政府機関債と住宅ローン担保証券は月間350億ドルにそれぞれ縮小額が倍増されます。
従って、図2で言うところの紫色で示した米国のマネタリーベースが、今後コロナ以前の水準に戻っていくことが予想されます。

FRB vs日銀!

では、今後株式市場はどうなるでしょうか?
ECBは差し当たり、マネタリーベースを増やしもせず、減らしもしないという前提に立つと、今後FRBのマネタリーベースの縮小ペースと日銀のマネタリーベースの拡大ペースの戦いになる公算が高いです。
ただし、日銀も足元の急激な円安トレンドに歯止めをかけたいでしょうから、長期金利の上昇を抑え込むため行っている指値オペなどを無尽蔵に続けるわけにもいきません。
そう考えるならば、日米欧のマネタリーベースの合計残高は自ずと減っていく方向にならざるを得ず、株式市場にはマイナスの影響となるのは避けられないでしょう。

為替市場に注目!

市場に出回っている米ドルをFRBが吸収するわけですから、従来に比べれば米ドルを調達するのが難しくなる可能性があります。そうなれば、金利の低い円を売って、米ドルに転換しようとする動きはよりいっそう強くなると思われます。
その結果、ドル円相場は一段と円安の方向に動くことになるかもしれません。

eワラントを使ってみては?

もし現物株を保有している方であれば、下落リスクをヘッジするために、eワラントのプットを購入するのが良いでしょう。ただ今すぐではなく、日米欧のマネタリーベースが本格的に減少し始めるタイミングで良いでしょう。

また為替に関しては、差し当たりコール型のeワラントを買っておくのが良いかもしれません。
ただし、長期金利の動きには要注意です。為替に関しては、米国の長期金利との連動性が非常に高いですから、毎月発表される米国のCPI(消費者物価指数)の数値が落ち着きを取り戻し、「長期的な物価高に一服感も?」というムードが市場に出始めると、長期金利の下落要因になります。そうなると為替に関しては、敏感に反応する可能性も高いですから、その際はプット型eワラントの出番になるでしょう。

(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。