IMM投機筋ポジションがかつてないドル売り水準に

 外国人投資家と話をしていて、言われても何も言い返せないことに日本のPERがある。
 向こう1年間の利益見込みを用いるのが一般的である海外市場と違い、日本のそれは「今年度基準」。つまり、3月期に本決算が集中する日本の場合、東証45日ルールにより3月決算企業の本決算及び来期見込みの発表される(原則としての)期日の5月15日にほぼ新年度基準でのPERが確定することになる。つまり、決算発表が本格化する直前である現在は、2017年度(2018年3月期)の利益見込みを用いた、最も“旬ではない”PERということになる。

 12倍台で推移する日経平均PERの割安感について、外国人の言及が少ないのには、このような理由があるのだが、裏を返せば、5月に確定する2018年度基準のPERに注目しているとも考えられる。
 その企業の決算見込みに大きく影響を与えるのが外国為替レート(前提レート)なのだが、12月時点で、2018年度の前提レートが1ドル=110円水準であれば、最終利益は前年度比9%程度の増益が見込まれていたものの、現在は1ドル=106円程度であれば、ほぼ前年度並みとの見方がシンクタンクや証券会社から出されている。また、先ごろ発表された日銀短観において、経常利益について慎重な見方が広がっていたことも、これに符合する。ドル円ベースで5円の円高により9%増益が吹き飛ぶということは、依然として1円あたり最終利益を1.8%変動させる非常に大きな影響力を持っていることが分かるが、そのドル円レートの今後の展開に影響を与える需給的な要因が密かに浮上している。
 上のグラフは、よく目にされていると思われるが、CME(シカゴマーカンタイル取引所)の一部門であるIMM(International Monetary Market)の投機筋ドル円ポジションである。見やすさを考慮してプラス、マイナス記号を調整しているが、これによると、昨年11月中旬に4年ぶりのドル買い(円売り)状態を記録し、その後もなかなか建玉が減少しない状態が続いていたものの、4月3日、4月10日と2週続けて逆に円買い状態に転じたことが分かる。これは2月末からの約1ヵ月で10万枚もドル売り(円買い)が行われた結果である。円買いに転じるのは実に約1年4ヵ月ぶりのことである。
 この円買い方向のポジションが溜まっていく過程においては円高が進行するが、何れ、手仕舞いによりその逆の流れが生まれる。
 続いてのグラフは、私がオリジナルで追いかけている数字であるが、このIMMの投機筋ポジションを、ドル円だけでなく、ユーロドル、そしてポンドドルも加えて、3通貨合計の対ドルポジションをまとめ、それをドルベースで記したものである。

 これによると、ドル円の動き(青線)は、2011年以降、3通貨合計ポジションの動向(橙線)にやや遅行して追随することが見て取れる。今年に入ってからの円高進行は、この3通貨合計ポジションがドル売りに傾いていった流れがもたらしたものと考えられるが、これは無論、上述したように投機筋のドル円ポジションの手仕舞いによるところが大きいが、もうひとつカラクリがある。
 それは、ユーロドルについては、昨年春以降ユーロ買い(ドル売り)ポジションが高位で推移し、現在に至るまでその手仕舞いが出ていないということである。
 その結果、3通貨合計での対ドルポジションは、2005年の計測開始から最も大きなドル売りが溜まった状態となっている。ドル円における円買い方向が崩れたのちに、この3通貨ベースでの手仕舞いが出始めた場合、それは需給面からの大きなドル高要因として認識される可能性がある。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

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