OPECもロシアもボールを持っていない

 先週金曜日、WTI原油先物は2%近く上昇し、4月20日以来ちょうど1か月ぶりに1バレル50ドル台に上昇した。
 25日にウィーンでOPEC総会が開催されるが、それを前に、先週サウジアラビアとロシアの担当相が来年3月までの減産について合意したことが報道され、ここもと、総会での減産再合意、原油価格の上昇を期待した買いが優勢の展開となっている。

 同じく先週金曜日にCFTC(米国商品先物取引委員会)が発表した5月26日の投機筋のネットポジションは前週とほぼ変わらない33万枚弱の買い超となったが、私は、この投機筋のポジションについて、下のグラフにように35万枚の買い超レベルに補助線を引いている。これまでこの水準を超えて買い超が膨らむと、その後は、その手仕舞売りが原油価格の下落要因として浮上してきた歴史があるからだ。

 前週、この水準を下回る水準に買い超枚数は減少したのであるが、それは実に23週ぶりのこと。昨年末の8年ぶりのOPECの減産合意、15年ぶりの非OPECも含めた歴史的減産合意を受けて、膨らませた投機筋の買いポジションの整理売りがここに来て加速していることになるが、依然としてまだ手仕舞い途中であることには注意が必要である。グラフから明らかなように、この買い超枚数が増加傾向にあるか、それとも減少傾向にあるかが、これまで大きく原油先物価格の動向に影響を与え続けてきたからである。

 上記の“歴史的減産合意”を受けても、その価格上昇は瞬間的なものに留まった学習効果を投機筋は覚えていることから、今回の総会が減産合意の無風通過となっても、冒頭に書いたように、その後、投機筋の買い超枚数が再度増加傾向を示し、先物価格も上昇するというシナリオには大いに疑問を持つ。

 また、懸念されるのは、OPECでもロシアでもなく、やはり米国の動向である。具体的には、シェールオイルだけでなく、天然ガスの生産量にもここにきて増加の傾向が見られることだ。米エネルギー情報局(EIA)が2月の天然ガス生産量を公表した際、日本では報じられなかったが、米国においては一部で話題となった。その日量の増加量が14億立方フィートと事前予想の3倍にも相当する大きなものとなったのである。

 地域的に増加が目立ったのが、パーミアン。この地域は、OPECの減産合意後、米国においていち早くシェールオイルの稼働掘削機数であるリグカウントが増加した場所である。そのリグカウントの増加が、結果的に“副産物”として取れる天然ガスの日量増加につながったということであろう。

 忘れてはいけないのは、パーミアンに続いて、バッケン、イーグルフォードといった地域でもリグカウントの増加が見られているということ。これらの地域の“副産物”は今後エネルギー価格全体の押し下げ要因と十分になりうる。

 そう考えると、現在、原油価格の決定権(ボール)はOPECにもロシアにもないような気がしてならない。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

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