米ドル対円相場が堅調に推移しています。本稿では過去における年末年始相場のパターンを振り返り、現在の相場に当てはめて考えてみたいと思います。
<まとめ>
- 今年は例年期待されてきた、年末の米ドル需要(米ドル高要因)がさほどに強くないと思われる。
- 相場が年末の米ドル対円相場高を期待して上昇しているのであれば、その分、下げ圧力は高まると思われる。
- 米ドル対円相場に下げ圧力が高まるのであれば、プット型の購入を検討しても良いだろう。
- 満期日は2月以降に設定しておくと、下げ相場の開始が遅れた際でも収益機会は確保される可能性がある。
米ドル円ベーシススワップと米ドル対円相場には関連がありそう
図1によると、各年の米ドル円ベーシススワップ*(赤線)はだいたい年末近くに底打ちするパターンが多く見受けられました(底固めの期間にはバラつきがあります)。ただし、今年は様子が違うようです(10月15日に底打ちしたように見受けられる)。
また、各年とも年末近くに米ドル円ベーシススワップが底打ちすると、間もなく米ドル対円相場(青線)が下落するパターンが多かったようです(程度の差はありますが)。典型的な例は2016年末から2017年初にかけての動きでしょう(図2)。ベーシススワップ*
ベーシススワップ*とは、米ドルの需要が高いか低いかを示す指標のようなものとお考えください。マイナス幅の拡大は米ドルに対する需要が多いことを示します。
実態としてはこの場合、米ドルと日本円の通貨スワップ(米ドルと日本円の変動金利を交換。取引開始日と満期日には各々の元本交換を伴う)を取引する際、追加的なコストとして、該当する期間に応じたベーシススワップをその計算に追加します。米ドルを調達する(取引開始日に米ドルを受け取る)側は、該当する期間に応じたベーシススワップ(年率表示)を取引の相手方に追加で支払うことになります(ベーシススワップがマイナス表示の場合)。
期間が長かったり、ベーシススワップが無視できないほど大きく変化した際には、為替スワップ(先物為替予約など)でもベーシススワップを考慮して計算します。
年末の米ドル高と年始に相場が反落しやすかった理由
昨年末まで、米国企業は年末近くに海外拠点の利益を米国へ送金することが多かった(リパトリエーション)ため、年末には米ドル買い/他国通貨売りが発生しやすいとされてきました。これが年末に多発する米ドル高の理由の一つと思われます。
また、昨年末までは短期金利市場では基準となる市中金利にベーシススワップ(コスト)を加えてでもドル調達(借入)をする動きが顕著でした。米ドルの出し手である米国企業などが貸し出しを手控えるためです。
しかし、今年からはこれら年末特有の作業を行う米国企業は少なくなっているのかもしれません。
今年の年末は例年とは違うかもしれない
昨年末に米国法人税の大減税(35%→21%)が可決されましたが、同時に海外拠点での収益に関する税制も可決、その後施行されています(優遇税制というよりも、強制税制)。
これを機会に海外の余裕資金(利益など)を国内に還流させる動きが年初からあったようです。海外拠点の利益に対する税務関係(8年間の延払いが可能)が一旦片付いていることから、各拠点での資金繰りに問題なければ随時、本国へ利益を送金するケースもあったでしょう。つまり、海外拠点の利益の本国送金(又は海外拠点の利益を米ドルへ換金する動き)は例年よりも前倒しで実行されていた可能性があります。
また、米国企業の海外拠点による利益の米ドルへの換金需要は金利面でも前倒しで実行されていた可能性があります。米ドル金利はいまのところ先進国の中で最も高いことから、米国企業が余裕資金を自国通貨の米ドルで運用するのが安全かつ有利であろうと思われるためです。
<結論>
どうやら今年の年末は、例年同様のドル需要があるわけではなさそうです。また、冒頭に示したこの9月~10月期における米ドル円ベーシススワップの大幅なマイナス幅拡大も、本邦機関投資家の為替ヘッジがきっかけであり、米国発ではなかった模様です。
直近の市場が例年通りの米ドル需要を期待して米ドル高市場を形成しているのであれば、このような動きが逆に今後の米ドル対円相場の上値を抑えてしまう可能性があります。
米ドル対円相場がが下落すると予想する場合はプット型を選択します。年末の米ドル高が気になる場合は、満期日が2月以降の銘柄を選択すると良いかもしれません。米ドル対円相場を対象原資産ととするeワラント一覧は下記のリンクからご確認いただけます。
米ドル対円相場を対象とするeワラント
(eワラント証券 投資情報室)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。