フィスコ社提供の今週のeワラント特選銘柄です。
<今週の東京株式市場見通し>
今週(10/3~10/7)の東京株式市場は一進一退か。日経平均株価の予想レンジは25,200~26,700円。米金融政策の動向を占う上でカギを握る米9月雇用統計を週末に控えるなか、様子見ムードが漂いやすく、この間は6-8月期決算を受けた個別株物色が主体となりそうだ。
外部環境の不透明感が株式市場の上値を抑制する展開が続きそうだ。欧州ではエネルギー価格の高騰長期化を背景とした物価高と景気後退の併存であるスタグフレーションが進行している。加えて、足元では英国でトラス政権が財源の裏付けに乏しい大規模な財政政策を打ち出しているほか、イタリアでは積極的な財政出動でバラマキ色の濃い右派政権が誕生。財政不安から欧州では株安に加えて通貨安・債券安が進行。英イングランド銀行による長期国債買取りという緊急対応により一時的にこうした金融不安は緩和したが、疑心暗鬼は続く。国債買取りの期限である10月14日が近づくにつれて再び同様の問題がクローズアップされる可能性がある。そもそも、国債買取りは資金供給を通じて最終的にはインフレに寄与しかねないため政策の不整合性が否めない。欧州発の市場波乱には注意が必要だ。
米国でも懸案事項は多い。9月27日に米10年債利回りは一時4%を超えた。欧州発の債券売りが波及した形ではあるが、欧州での事情次第では再び4%超えを試す可能性もあり、金利上昇を通じた株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の低下圧力には注意したい。一方、より重要なのは企業業績の悪化を巡る懸念だ。29日には米企業の決算がいくつかあった。まず、半導体大手マイクロン・テクノロジーの9-11月期売上高見通しは市場予想を大幅に下回ったほか、設備投資額は2023会計年度に30%減少する見通しという。半導体需要の減速はかねてから明らかになっていたため、驚きはないが、下振れ幅や設備投資額の減少幅は想定よりも大きい印象だ。次に、米スポーツ用品メーカー大手ナイキの決算も、北米での需要の堅調さは確認されたものの、在庫調整が懸案事項として残った。
そして、最も印象的だったのは翌日の東京市場での自動車関連株の急落にも繋がった中古車販売の米カーマックスの決算だ。6-8月期業績は多くの項目で市場予想を大幅に下振れた。会社側は金利上昇と先行き不透明感が消費者の購入能力を引き下げていると説明。これまで、部材不足で新車納入が遅れるなか中古車販売は活況で、米国では中古車価格がピークアウトしたとはいえ高止まりしていた。そのため、依然として中古車業界は需要が堅調だと思われていたが、そうした見通しが変化してきていることが今回の決算で示唆された。民間消費はまだ堅調とされていた米国も、住宅市場を起点として既に減速し始めており、それがいよいよ住宅以外の耐久財にも及んできたということだろう。米国の景気動向には一段と注意が必要になってきた。
米アップルの最新スマートフォンの増産計画撤回などもあり、大手優良企業でも景気後退を避けることはできないとの懸念が強まっている。7-9月期決算の発表が始まる10月下旬までは、これまでのような企業業績に関するネガティブな報道が相次ぐ可能性があり、一株当たり利益(EPS)への低下圧力が続きそうだ。
こうした懸案事項が渦巻くなかでの週末の米雇用統計とあって相場も神経質にならざるを得ない。景気が悪くなっても、中央銀行が金融緩和で下支えしてくれれば問題ないが、現在、インフレ抑制に必死な米連邦準備制度理事会(FRB)は反対に積極的に金融引き締め中だ。引き締めを続けざるを得ないのは、物価指標が依然としてインフレを示しているからであり、その主因は粘着質の強いサービス分野でのインフレだ。ただ、米コア消費者物価指数(CPI)の3割と最大の割合を占める住居費については、先行指標である住宅価格に4月を高値とした明確なピークアウト感が見られている。27日に発表された7月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)は前年同月比で統計開始後最大の減速を示した。
そのため、残るインフレでの懸案事項は労働市場の逼迫を通じた賃金上昇だ。インフレにピークアウト感が見られるとはいえ、価格水準としては記録的な高水準での高止まりが続いており、労働者による賃金引き上げ圧力は強い。市場の逼迫もまだ続いているため、雇用者側も高賃金で労働者を惹きつける必要がある。賃金交渉を巡る労働交渉も活発化している。今年前半だけで従業員投票で過半数の支持を得て代表権を認められ労使交渉に臨む労働組合の数は2005年以来の多さとも伝わっている。ストライキの数も前年比で8割増という。最後に残る賃金インフレはかなり手強いことが想定される。週末の米雇用統計では、平均賃金の伸びに注目したい。
ほか、週末には安川電機(6506)の決算発表を控える。足元の環境下から好決算・好反応は期待できないだろうが、現状の株価水準から更に売り込まれてしまうのか、それとも短期的にもあく抜け的な動きになるのか注視したい。
今週は10月3日に9月日銀短観、9月新車販売台数、日銀金融政策決定会合の「主な意見」(9/21~22開催分)、米9月ISM製造業景況指数、4日に米8月製造業受注、5日に米9月ADP雇用統計、米9月ISM非製造業景況指数、6日に地域系報告(さくらレポート)、7日に8月家計調査、8月景気動向調査、米9月雇用統計などが発表予定。
◇
<今週の注目銘柄>
味の素(2802)コール58回
権利行使価格4,050円(原資産:3,962円)デルタ:0.45
ディフェンシブ性の高いセクターであるほか、高いブランド力を背景とした値上げ力に強みを持ち、インフレ耐性もある銘柄だと考える。海外を中心に堅調な調味料・食品のほか、電子材料やCDMO(医薬品受託製造)など高い成長力を秘めた事業も魅力的で、今後も安定的な業績成長を背景に堅調な株価推移が期待できそうだ。
◇
アップル(AAPL)プット185回
権利行使価格140米ドル(原資産:142.48米ドル)デルタ:-0.42
最新スマートフォンiPhone(アイフォーン)14の販売動向が予想より悪いようで、下半期の増産計画を断念したと伝わっている。米企業の中では相対的に業績が堅調ということで株価も底堅く推移してきたが、今回の報道によるインパクトはそれなりに大きそうだ。株価については次の決算に向けての警戒感でじり安基調が続きそうだ。
◇
WTI原油先物リンク債2022年12月限 プット6回
権利行使価格85米ドル(原資産:81.23米ドル)デルタ:-0.61
世界的な景気後退を背景とした需要鈍化を受けてエネルギー価格が全般下落基調にある。中長期的な観点からは脱炭素化を背景とした設備投資不足で再び需要超過の局面がやってくる可能性が高いが、ここから約1年の短期スパンでは供給超過が続きそうだ。10月の石油輸出国機構(OPEC)プラス会合では減産の可能性もあるが、原油価格を反転させるほどの材料にはならないだろう。
(提供:株式会社フィスコ)
※記載の銘柄情報はフィスコ社との情報利用契約に基づき、カイカ証券が利用料を支払って掲載しています。また、分析対象の選定およびコメントは、フィスコ社独自の調査・判断に基づくものであり、カイカ証券による投資情報ではありません。