2022年8月29日のeワラント特選銘柄

フィスコ社提供の今週のeワラント特選銘柄です。

<今週の東京株式市場見通し>

今週(8/29~9/2)の東京株式市場は一進一退か。日経平均株価の予想レンジは28,200~28,900円。週半ばからは週末の米8月雇用統計を前に様子見ムードが強まりそうだ。

週明けは経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による講演内容を消化することになる。もともと、中長期的な金融政策について語る場であるうえ、パウエル議長は何度も今後の金融引き締めペースについては「データ次第」としているため、無風通過が想定されている。むしろ、当初はタカ派を警戒する声が多かっただけに、イベント通過後はあく抜けで短期的には上昇すると考えられている。一方で、複数の米連銀総裁からタカ派発言が相次ぐ中でも株式市場はほとんど意に介さず、結局利下げに転じるのではないかという期待を持ったままでいる。

こうした中、ブルームバーグが算出している米国での金融緩和の度合いを示す金融状況指数は、利上げが開始された今年の3月よりも緩和的な状況に転じていることが示されている。中央銀行としてのインフレ抑制の決意を示し、市場の楽観を修正するためにパウエル議長がタカ派な発言を行う可能性も捨てきれない。いずれにせよ、週前半は先週末の米国市場の動向を反映することになる。

ただ、週末には米8月雇用統計が控えていることから、週初の相場の反応がそのまま一方向に長続きすることはないと考えられる。米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。下方硬直性のある賃金の伸びはインフレ抑制にとっては大きな悩みの種であり、8月分でも賃金の伸びに減速の兆しが見られなければ、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅拡大への警戒感が高まるだろう。そのため、週初の反応がポジティブなものであったとしても、週後半からは次第に株式市場は伸び悩む展開が想定される。

ほか、中国で8月の購買担当者景気指数(PMI)が発表予定のほか、米国ではサプライマネジメント協会(ISM)による8月の製造業景気指数が発表される。欧米が景気後退へと向かう一方、対照的に中国が4月をボトムに景気回復へと向かうことで世界経済の下支えが期待されていたが、中国では行動制限の長期化や不動産市況の悪化で景気低迷が長期化している。7月に続き、指標が前月から悪化すると景気後退がより意識され、7-9月期以降の業績悪化懸念が強まることになるだろう。ISM製造業景気指数も7月は52.8だったが、活動の拡大・縮小の境界を示す50割れが近づいており、株式市場のリバウンドが一服しつつある中、指標の悪化は素直に嫌気される可能性があるため、注意したい。

需給面での追い風が止みつつあることにも注意したい。24日、東京証券取引所が公表した裁定取引に係わる現物ポジションでは、8月19日時点での買い残から売り残を差し引いたネットの裁定買い残は1兆1,895億円と、前週から1,338億円増加、2021年9月27日以来の高水準を記録した。買い残のみでは1兆4,617億円で、2021年3月22日及び9月20日の水準を上回り、2019年以降では最高水準となる。日経平均は、買い残がピークを付けた上述の昨年3月と9月以降、下落傾向となっており、経験則からすると、これまでのような需給面での押し上げ効果を今後期待することは難しいだろう。日経ダブルイン(1357)の買い残が高水準にあるほか、日経レバETF(1570)の売り長が続いており、下値では個人投資家による買い戻しが支えそうだが、全体的には目線は下方向に傾きつつあると言える。

今週は30日に7月失業率・有効求人倍率、米6月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米8月CB消費者信頼感指数、31日に7月鉱工業生産、7月商業動態統計、8月消費動向調査、中国8月製造業PMI、中国8月非製造業PMI、9月1日に4-6月期法人企業統計、8月新車販売台数、中国8月財新製造業PMI、米8月ISM製造業景気指数、2日に米8月雇用統計、米7月製造業受注が発表予定。

<今週の注目銘柄>

東レ (3402)  コール202回
権利行使価格875円(原資産:803.7円)デルタ:0.39

世界的に航空機市場が急速に回復するなか、主力の炭素繊維事業の業績けん引が期待される。加えて、8月からは米ボーイング787の納入が再開されており、今後の同事業の回復ペースは加速することが見込まれる。また脱炭素化が進むなか、風力発電のブレード大型化なども追い風になっており、同事業の中長期的な成長期待は高い。株価は先週末にもち合いを上放れており、テクニカル面も良好だ。

日立建機(6305)プット115回
権利行使価格3,000円(原資産:2,985円)デルタ:-0.50

アジアやオセアニアを中心に建機販売は堅調。第1四半期決算時に通期営業利益も上方修正されたが、為替の円安効果が大半で、部品調達難や物流費の高騰によるマイナス要因の増額の方がネガティブな印象として大きかった。保守的な計画ともいえるが、世界的に景気後退懸念が強まるなか、次回の決算で懸念を払しょくしない限り、当面上値は重いと予想される。

IHI(7013)コール71回
権利行使価格3,550円(原資産:3,620円)デルタ:0.56

先週、岸田首相は次世代型の原子力発電所の開発・建設を検討するよう指示した。これまでの新増設は想定していないという方針を転換する形となった。また、来夏以降に最大で17基の原発を再稼働させるほか、運転期間延長の検討も指示。原発政策の推進明確化への期待から、同社を含めて関連銘柄の買いが活発化する場面があった。また、同社は航空機市場の回復に伴い、収益性の高いスペアパーツ事業が好調で、業績も好調だ。6月9日に付けた年初来高値からの調整は日柄的にも値幅的にも十分とみられ、出直りに期待したい。


(提供:株式会社フィスコ)

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