フィスコ社提供の今週のeワラント特選銘柄です。
<今週の東京株式市場見通し>
今週(8/8~8/12)の東京株式市場は神経質な展開か。日経平均株価の予想レンジは27,000~28,800円。米国の物価関連指標の結果次第で上下に大きく振れる展開が予想される。
週初は先週末に発表された米7月雇用統計を受けた米国市場の動向を反映することになる。事前の予想では雇用者数の伸びと平均賃金の伸びについて共に減速が見込まれている。予想通りの結果であれば、インフレピークアウト期待が強まる形で足元のハイテク・グロース株を中心とした相場上昇に弾みがつきそうだ。
一方、最大の注目は10日の米7月消費者物価指数(CPI)であり、これを前に雇用統計を無難に通過したとしても、週前半は動意に乏しい展開となる可能性もある。CPIの総合は前年比+8.8%と6月(同+9.1%)から減速が見込まれている。実際、前回分の発表以降、原油先物価格も米国のガソリン価格も明らかに下落傾向にあり、減速はほぼ間違いないだろう。焦点は下振れ度合いであり、減速しても予想より高い伸びであれば買い戻し相場は一服する可能性が高い。他方、現在、機関投資家の株式の買い持ち高はかなり低い状況にあるため、CPIが予想以上に減速した場合には上昇基調に弾みが付きそうだ。
ただ、注意をしたいのは米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによるけん制発言だ。世界的な景気後退懸念により、米金利が大きく低下しており、足元の米10年物の実質金利(名目金利から期待インフレ率を差し引いた指標)は+0.2%台とかなり低い水準にある。実質金利の低下を背景にした株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の上昇を要因に株価上昇が続いているが、インフレ抑制を最優先課題としているFRBが、こうした緩和的な状況を許容し続けるとは考えにくい。
来年末の政策金利水準を巡っては、早くも利下げを織り込み始めている市場と、来年も利上げを続ける方針を維持しているFRBとの間ではかなり乖離が出てきている。先週、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁はインフレ目標の達成には「程遠い」としたほか、セントルイス連銀のブラード総裁は、大幅な利上げを前倒しで実施すべきとし、政策金利を年末時点で3.75~4.00%とすることが望ましいとの見解を改めて示した。また、クリーブランド連銀のメスター総裁も、需要を抑制するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要があるとの考えを示した。利下げ転換について、ブラード総裁とメスター総裁は、幅広い指標で連続してインフレ減速が確認される必要があるとしており、今回の7月CPIが減速したとしても材料不足であることは否めない。
インフレと利上げを巡る認識で市場とFRBの乖離があまりに広がり過ぎることは望ましくない。このため、株式市場が先走ってインフレピークアウト・利下げ転換という楽観的な見方に傾いて、上昇基調を強め過ぎてしまうと、FRBからのけん制発言が増えてくることが予想されるため、この点は注意したい。また、夏枯れ相場で、8月は例年ボラティリティーの高い時期になりやすいため、可能性は低いが、指標がネガティブな結果になった場合の揺り戻しには注意が必要だろう。
また、4日の英国金融政策委員会では、27年ぶりとなる0.5ptの利上げがほぼ満場一致で決定された。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、次回9月以降の会合ではあらゆる選択肢を検討するともコメントした。さらに驚くべきは、インフレと景気の見通しだ。6月時点で前年比+9.4%と40年ぶりの高い伸びにまで加速している同国の消費者物価指数(CPI)について、中銀は前回6月の政策発表時にはインフレのピークは今年10月頃で、11%強と予想していた。しかし、今回は、ピークが13.3%になる見通しと大幅に引き上げ。また、今年10-12月期には景気後退(リセッション)に入り、来年末まで5四半期連続でリセッションが続くという。欧州では完全にスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が現実ものとして台頭してきており、世界的な景気後退懸念にも注意したい。
なお、今週は8日に7月景気ウォッチャー調査、9日に7月工作機械受注、10日に7月企業物価指数、中国7月生産者物価指数(PPI)、中国7月CPI、米7月CPI、11日に米7月PPI、12日にオプションSQ、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数が予定されている。
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<今週の注目銘柄>
WTI原油先物リンク債 プット11回
権利行使価格100米ドル(原資産:89.14米ドル)デルタ:-0.88
3日、石油輸出国機構(OPEC)プラスが開かれたが、9月の原油生産量については日量10万バレルの拡大と、増産幅はかなり小幅なものとなった。この結果を受け、需給逼迫が意識される形でWTI原油先物価格(9月物)は一時急伸する場面があった。しかし、米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計の結果を受けてその後は大幅下落。さらに、英国金融政策委員会の結果を受けてリセッション懸念が強まるなか、4日には、ロシアのウクライナ侵攻後初となる90ドル割れとなった。業界の構造的な供給不足は解消されていないが、当面はリセッションに伴う需要鈍化による価格下落圧力の方が勝りやすく、原油価格の上値は重いだろう。
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クボタ(6326)プット70回
権利行使価格2,050円(原資産:2,113円)デルタ:-0.41
3日に第2四半期決算を発表。4-6月期営業利益は546億円で前年同期比21.8%減となり、第1四半期の同14.6%減から減益率が拡大。通期予想は従来の2,500億円から2,600億円、前期比5.6%増へと上方修正されたが、2,800億円程度のコンセンサス水準には未達。為替レート変更による円安効果が上方修正の要因だが、固定費や販売費などのコスト負担が従来比で増大する見込みで、実質的な下方修正となっている。リセッション懸念が強まるなか、資源関連株への物色も期待しづらく、上値の重さが意識されよう。
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トヨタ自動車(7203)プット319回
権利行使価格2,050円(原資産:2,123円)デルタ:-0.40
4日に第1四半期決算を発表。営業利益は前年同期比42%減の5,786億円と、市場コンセンサスの8,600億円を大幅に下回った。円安効果以上に資材費高騰や供給制約による販売台数の減少が重石になった。また、想定為替レートを1ドル=115円から130円へと見直したものの、通期営業利益の2兆円4,000億円の計画は据え置かれ、コンセンサスの3兆円2,300億円を大幅下振れ。サプライヤーの負担を肩代わりしたことが影響した形だが、実績および見通しともにネガティブで、当面、見直し買いの機運は高まりにくいだろう。
(提供:株式会社フィスコ)
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