ヒンデンブルグオーメンは米国市場の株価急落を予兆するシグナルです。最近では5月10日(日本時間)に点灯し、その後の相場下落の前兆となっていたと言えるでしょう。以前にもヒンデンブルグオーメンの点灯メカニズムについて解説していますが、今回、昨年9月25日以来の点灯となりましたので、「ヒンデンブルグオーメンを初めて聞いた」という方のためにヒンデンブルグオーメンの点灯メカニズムについて解説します。
ヒンデンブルグオーメンとは?
ヒンデンブルグオーメンはテクニカル指標の一種で、eワラント証券投資情報室ではニューヨーク証券取引所上場銘柄を用いてヒンデンブルグオーメンを毎営業日更新して公開しています。
具体的には次の4条件を満たすと点灯となります。なお、この4条件についてはどの株式市場を用いるか、判定のしきい値にどの値を用いるかによってシグナル点灯の有無は異なりますが、eワラント証券投資情報室では株式投資に対する総合的な有意性から独自に定義しています。
条件1:ニューヨーク証券取引所(NYSE)での高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上
条件2:NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている
条件3:短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス
条件4:高値更新銘柄数が安値更新銘柄数の2倍を超えない
図1はヒンデンブルグオーメンの点灯開始日とNYダウ平均株価の推移です。条件2にあるように株価が高値圏にあるときに点灯するので、昨年10月までのように株価が上昇トレンドにあるときには頻繁に点灯していることが分かります。また、点灯後の下落については、直近1年ほどでは短期的なものにとどまっていました。

ヒンデンブルグオーメンをブレイクダウン
ヒンデンブルグオーメン点灯の各条件について、過去1年間の動きを見ていったのが図2~図5です。これを見ていくことで、どのようなときにヒンデンブルグオーメンが点灯するのか、ヒンデンブルグオーメンの点灯が何を意味しているのか理解できると思われます。
図2は「条件1:ニューヨーク証券取引所(NYSE)での高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上」についてです。新高値銘柄数と新安値銘柄数が共に条件になっており、高値更新銘柄しかない総強気の局面や安値更新銘柄しかない総弱気の局面よりも相場の転換点で条件を満たすものと思われます。

図3は「条件2:NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている」についてです。終値で50営業日と比較して1.00を超えていれば条件2を満たすことになります。株式市場が高値圏にないとヒンデンブルグオーメンは点灯しないことになります。

図4は「条件3:短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス」についてです。マクラレンオシレーターの式は複雑なので本稿では詳細を割愛しますが、解釈としてマクラレンオシレーターがプラスであれば上昇トレンド、マイナスであれば下落トレンドと言えます。なお、eワラント証券投資情報室で公開しているヒンデンブルグオーメンは一度点灯すると、条件3が満たされている限り、他の3つの条件が満たされていなくても継続点灯中としています。

図5は「条件4:高値更新銘柄数が安値更新銘柄数の2倍を超えない」についてです。新高値銘柄数と新安値銘柄数の比較であり、新高値銘柄数が多ければ相場が強く、新安値銘柄数が多ければ相場が弱いということになります。条件4は新高値銘柄数が減って新安値銘柄数が増えてきたことを示すものになります。

ヒンデンブルグオーメンの特徴
ヒンデンブルグオーメンはその独特の名前から神秘的な印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ざっくり解釈すると相場の方向感に高値更新銘柄数と安値更新銘柄数から相場の強弱感を加えたものです。例えばNYダウ平均は30銘柄で構成されているので、株価指数だけを見ると株式市場で起きている状況の変化に気づかないかもしれませんが、ヒンデンブルグオーメンは相場の変化を気づかせてくれる道具と言えるでしょう。
また、条件2にあるように株価が高値圏にあるときに点灯するので、下落が続いていると点灯しないことになります。したがって「ヒンデンブルグオーメンが点灯していないから買い」とはならないことに注意が必要です。ヒンデンブルグオーメンは上昇トレンドにおける急落サインとして活用する一方で、投資においては、ヒンデンブルグオーメンだけで投資判断はせず、相場のトレンドを把握して臨むことが大切なことと思われます。
(eワラント証券 投資情報室)
* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。