人民元の上昇は将来の株高への序章となるか?

人民元が動意づいています。11月上旬よりに人民元は大きく上場し、対米ドルでは8月以来となる6元台を回復しました。昨年より続いていた米中通商問題に一定の合意がなされるだろうとの期待から人民元に買いが集まったことがその要因と考えられています。ただ、もしかすると理由はそれだけではないかもしれません。

人民元相場の推移

2019年8月5日、人民元は急落し、2008年以来初めて対米ドルで7元台を記録しました。その後も人民元の下落は続き、8月全体で3.8%の下落となりました。これは、中国人民銀行が為替レートを切り下げて世界中で大きな混乱を招いた2015年のチャイナショックを超えて、過去25年間で最大の下げ率でした。これを受けて、米国側は「中国側は意図的に人民元を切り下げている」と非難し、トランプ大統領は中国を為替操作国に認定するなど、米中関係にも大きな影響を与えました。


急落前の中国は相次ぐ資本流出を為替介入で安定化させようとしてきたという経緯があります。すなわち、保有する外貨(外貨建て国債)を売り、人民元を買うことで、人民元が下落しすぎないように図ってきました。8月の急落は、中国が今までのような為替介入に消極的になったことがその要因の1つと考えられます。

しかし、10月の国慶節以降、人民元相場は上昇に転じています。米中それぞれの当局者から、米国と中国が第一弾の合意に近づいていると報じられたことで、人民元や中国株などのリスク性資産に買い戻しの動きが出ていることがその理由と解説されるケースが多いですが、もしかすると中国当局・人民銀行が為替介入を再開したか、又は介入の規模を拡大したことも要因のひとつなのかもしれません。

米長期金利の上昇にヒントが?

しかし、直近公表されている10月までの中国の外貨準備高(図2)を見ても、大規模な為替介入が行われたことを確認することはできません。


ただ、中国が為替介入を再開・拡大したことを表すヒントとなるかもしれないのが、米長期金利の急上昇です(以下において「米長期金利」とは米国の長期国債利回りのことを指します)。10月以降の米長期金利を見てみると、大きく上昇し、特に11月に入ってからはその上げ足を速めています。

本来、米国の長期金利が上昇すれば、他通貨に対して米ドル高となるのが一般的です(実際、対円や対ユーロでは11月以降に米ドル高が進んでいます)が、逆に人民元は対米ドルで上昇しています。人民元高米ドル安と長期金利の上昇が同時に発生していることから、中国当局による為替介入、具体的には、中国が保有する米国債を売却して得た米ドルを売却し、人民元を買うという介入方法が行われた可能性があります。中国は世界最大の米国債保有国であり、中国当局による米国債売りは長期金利上昇に少なからずインパクトがあると考えられます。

為替介入が行われているとすれば?

人民元の上昇が中国の為替介入に起因する需給要因によるものだとすれば、中国のファンダメンタルズは依然として芳しいものではない可能性があります。実際、直近発表された中国の経済指標はかつてほど中国経済の拡大を示すものではなく、成長鈍化を懸念する声も高まっています。米国との通商問題が大きな影を落としているようです。また、再び中国当局が為替介入を縮小・停止すれば人民元は大きく下落する可能性をはらんでいます。

一方で、米国との貿易交渉の武器となる可能性もある人民元安に為替介入で歯止めをかけていると見るのであれば、米国との交渉において指摘を受けるであろう為替問題に取り組むことで、貿易交渉を前進させたいという中国側の姿勢を表しているともとれそうです。中国側の積極的な姿勢が、米中通商問題を市場の予想よりも早く解決に向かわせる可能性もあるでしょう。懸案の米中問題が解決に向かえば、株高はさらに進むかもしれません。


(eワラント証券 投資情報室長 多田 幸大)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。