保有株に下落のヘッジをかけるプロテクティブ・プット戦術の事例

3月は株主権利を得ることができる株式が多いことから「すでに配当利回りの高い株式を持っています」という方も多いのではないでしょうか。

しかしながら、今年の3月下旬は米中通商協議の結果が出てきそうですし、英国のEU離脱が予定されているなどリスクイベントもあります。

配当金を得られても株安で損してしまう心配もあるでしょう。

プット型eワラントをあたかも「保有株式の下落に備える保険」のように活用することで株式を手放すことなく、しかも最大損失を限定させる方法(プロテクティブ・プット)があります。

プット型eワラントの活用法~日産自動車の事例~

eワラントが対象としている株式には配当利回りの高い株式もあります。

3月に株主権利が発生する銘柄で、eワラントの対象となっている株式のうち、予想配当利回りが相対的に高い銘柄は次のとおりです(2019年3月5日時点)。

表1:eワラントの対象となっている高配当株

銘柄名 予想配当利回り
日産自動車(7201) 6.06%
SUBARU(7270) 5.13%
オリックス(8591) 4.68%
東京エレクトロン(8035) 4.66%
三井物産(8031) 4.60%
三井住友 FG(8316) 4.27%
みずほ FG(8411) 4.26%
新日鐵住金(5401) 4.05%
三菱商事(8058) 3.97%
JXTGHD(5020) 3.91%

予想配当利回りの出所:SBI証券ホームページ

今回は「日産自動車(7201)」を事例として紹介しますが、まずは直近半年ほどの株価推移を図1で確認しましょう。


日産自動車の株価は昨年11月のゴーン氏逮捕を受けて大きく下落し、さらに年末にかけては世界的なリスクオフの流れで下落を続けましたが、昨年12月25日にからは反発局面にあります。

日産自動車の経営体制の刷新への期待や高い予想配当利回りから保有を続けるつもりだという投資家もいらっしゃるでしょう。

しかし、相場全体に対する下落圧力がさらに強まれば、売却はしたくないけれども短期的な下落が不安、と思うこともあるかと思います。

このようなとき、相場下落時に価格上昇が見込めるプット型eワラントを活用します。

具体的には、保有している株式の量に該当する分だけ買って満期日まで保有します。

実践例の紹介

前提として、日産自動車をすでに1,000株保有しているものとします(買付時の株価930.0円と仮定)。

日産自動車を対象とするプット型eワラントの一覧を見ると、2019年3月5日時点では6銘柄あります。

今回は図1で見た2018年12月25日の安値850円から下の部分をプロテクトするという趣旨で、2019年8月14日満期日の権利行使価格850円のプット型eワラントを例として紹介します。

<プット型eワラント銘柄概要(2019年3月5日時点)>

  • 売気配値(お客様が買付できる単価、販売価格):1.06円 ※1
  • 満期日:2019年8月14日
  • 権利行使価格:850円
  • 1ワラント当たり原資産数(株数):0.02 ※2
  • 対象株式1,000株に対して必要な買付数量:50,000ワラント ※3
  • 買付金額:53,000円

※1 eワラントの価格(気配値)は市場動向によって変化します。

※2 1ワラントが何株に該当するかの係数です。予め定められています。

※3 必要な買付数量=株式保有数量(1,000)÷1ワラント当たり原資産数(0.02)

保有株の全てに保険をかけるイメージで考えれば、上記の式にあるように50,000ワラントを買うことになり、支払額は買付金額の53,000円です。

eワラントの満期日の2019年8月14日において、株価水準ごとの損益とプット型eワラントによるヘッジ効果は表2のとおりとなります。

表2:プット型eワラントによるヘッジ効果(フルヘッジ、単位:円)


満期日の株価(満期決済に用いられるのは始値)が850円以上であった場合、eワラントの満期受取金はありませんので、合計損益(C)はeワラントの買付金額分(B、53,000円)だけ目減りすることになりますが、株価が850円を下回るほどeワラントの満期決済金額が大きくなります。

例えば、株価が700円にまで下落したケースでは、eワラントを保有しないで株式だけを保有していれば230,000円の含み損となりますが、eワラントを保有していればeワラントで97,000円の利益が出るので合計損益(C)は133,000円の損失でとどまります。

一方で、株価が上昇した場合には株価の値上がり益を享受することができます。

例えば、株価が1,200円にまで上昇したケースでは、eワラントを保有しないで株式だけを保有していれば270,000円の含み益となり、eワラントを保有していても217,000円の含み益となります。

なお、表2では現物株式の購入に必要な手数料は考慮されておりません。

eワラントの取引手数料は無料ですが、お客様の買値と売値には売買価格差があり、表2では当該売買価格差は考慮されています。

保険が要らなくなったら買い取ってもらう

以上のように保有株式の値上がり益を期待しながら、プット型eワラントを下落に対するリスクヘッジの手段として活用する手法を、プロテクティブ・プットと言います。

プロテクティブ・プットは現物株の保有を続けるので、株主権利を得ることができます。

なお、満期日より前であればeワラントは買い取ってもらえるため、株価が上昇基調となって保険を掛ける必要性がなくなったらeワラントを満期前に売却してもかまいません。

表1の銘柄にはすべてプット型eワラントの用意がありますので、eワラントを上手に活用して配当や優待など株主権利を得るのに活用したいですね。


(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。