英国の国民投票や米国の大統領選挙を振り返ると、一時的に株式相場は大きく下落しましたがその後は値を戻しています。急落局面では保有している株式を慌てて投げ売ってしまった方もいらっしゃるかもしれません。相場急変でポジションを閉じるというのは最大損失を管理する方法として誤った投資行動ではないと考えられますが、プット型eワラントを下落の保険として活用することで、保有している現物株を売却せずに最大損失を限定することができます。
プット型eワラントの活用法
図1は2016年6月以降のソフトバンクグループの株価の推移です(なお、本稿ではソフトバンクグループ株を例に挙げていますが、ソフトバンクグループ株は個人投資家にも馴染みが深いことに加え、eワラントの銘柄数も多く、説明例として利用しやすいためです)。6月24日のブレグジットによる急落、7月19日のARMホールディングス買収発表による急落、11月9日のトランプ氏勝利による急落で株価は大きく下落しましたが、後には株価は下落前の水準を回復していたことが分かります。
株式投資をしていると、相場の急落で慌てて保有株を投げ売ったりすることや、保有株が上昇しているときはどうしても早く利食い売りをしてしまい、結果としてその後の上昇分を取れなかった、というケースは少なくないでしょう。
これらの行動は保有株の含み益の減少や含み損の拡大を予防するためのものですが、これは言い換えると価格変動リスクにさらされている資産の比率を低下させる合理的な行動といえます。とはいえ、保有している株式を手放してしまってはその後の株価上昇の恩恵を受けることはできません。
保有している株式を手放すことなく、最大損失を限定させる方法があります。相場下落時に価格上昇が見込めるプット型eワラントを、保有している株式の量に該当する分だけ買うという方法です。
実践例の紹介
ソフトバンクグループ(9984)の11月22日の終値は6,895円でした。前提として、既に6,800円で買い付けた当該株式を100株保有しているものとします。このまま継続保有したいけれども急落のリスクに備えたいので株価が6,000円を下回る部分に保険を掛けたいとします。なお、株式保有に生じた手数料は考慮していません。
<前提(2016年11月22日終値)>
対象株式:ソフトバンクグループ(9984)
株価:6,895円
買付単価:6,800円
保有数量:100株
株価が6,000円を下回る部分について保険を掛けたい場合は、権利行使価格6,000円のプット型eワラントを購入して満期日まで保有します。例えば、ソフトバンクグループ プット307回という銘柄は権利行使価格6,000円、満期日が2017年3月8日です。このプット型eワラントを買い持ちすることで、2017年3月8日において株価が6,000円を下回る部分に保険を掛けることができます。
<プット型eワラント銘柄概要(2016年11月22日15:12時点)>
売気配値(お客様が買付できる単価):1.89円※1
満期日:2017年3月8日
権利行使価格:6,000円
1ワラント当たり原資産数:0.005※2
対象株式100株に対して必要な買付数量:20,000ワラント※3
買付金額:37,800円
※1 eワラントの価格(気配値)は市場動向によって変化します。
※2 全てのeワラントに予め定められている小口化のための係数です。
※3 必要な買付数量=株式保有数量(100)÷1ワラント当たり原資産数(0.005)
保有株の全てに保険をかけるのであれば上記の式にあるように20,000ワラント必要となります。eワラントの満期日の2017年3月8日はこの保険の満期日とも言え、株価水準ごとの損益と保険によるヘッジ効果は次の表のとおりとなります。
満期日の株価(満期決済に用いられるのは始値)が6,000円以上であった場合、合計損益(C)はeワラントの買付金額分(37,800円)だけ目減りすることになりますが、株価が6,000円を下回るほどeワラントの満期決済金額が大きくなるため、合計損益(C)は117,800円の損失でとどまっています。例えば株価が4,500円となった場合には株式の評価損益(A)は230,000円の損失ですが、eワラントの満期決済損益(B)が112,200円の利益になっているので合計すると117,800円の損失で止まり、保険を掛けなかったときと比べて112,200円のプラスの効果があったことになります。
なお、この表では現物株式の購入に必要な一切の手数料は考慮されておりません。eワラントの買付手数料は無料ですが、お客様の買値と売値には売買価格差(売買スプレッド)があります。この表では当該売買価格差は考慮されています。
今後想定される相場急変イベント
以上のようにプット型eワラントを下落に対する保険として活用することによって、現物株を手放すことなく最大損失を確定させることができます。ただし、これは満期日まで保有した場合です。満期日より前であればeワラントの価格には時間的価値が残っている(0.01円以上で売却できる)ため、株価が上昇していて保険を掛ける必要性がなくなったらeワラントを売却してしまってもかまいません。
(eワラント証券 投資情報室)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。