円高メリット株のイメージと実体

3月23日の株価急落時には円高も進行し、米ドル対円相場が一時104円台に突入しました。日本の主要企業の多くは海外事業を行っていることから、円高は業績への悪影響から日本株市場全体としてはネガティブに捉えられることが一般的です。このような状況下で注目されやすいのは「円高メリット株」でしょう。「円高メリット株」は円高が進行することが業績にとってポジティブとなる株のことですが、データを見るとイメージとはちょっと異なるようです。

「円高メリット株」のイメージ

円高になると輸入品が割安になりますので、穀物、原油、木材などの資源や原材料を輸入し、加工販売しているいわゆる輸入企業にとっては、円高進行はメリットになるでしょう。また、円高になると海外旅行のコストも下がりますから旅行会社や航空会社にもメリットがありそうです。航空会社や運送会社は燃料コストの低下も期待できるかもしれません。

しかし、イメージで「円高メリット株」を選んで投資したところ、円高進行で株価が上昇するかと思えばそうはならなかったケースもあるのではないでしょうか。理由はいくつか考えられますが、その1つとして輸入企業が為替ヘッジ取引を活用して為替変動による業績への影響を小さくしていることが考えられます。

また、日本株市場全体でみれば円高でメリットを受ける企業は少数派なので、円高進行で機械的に日本株を売却する投資家がいることも考えられます。個別銘柄を選別せずに、指数に連動する投資成果を目指すインデックス運用の普及が進んでいることから、日本株を売るといった場合に指数を構成する全銘柄に売り圧力がかかることも考えられます。

データで確認すると・・・

そこでeワラントの対象となっている日本株113銘柄について、米ドル対円相場との関連性を調べてみました。分析期間は3月23日から遡って過去50週です。株価と米ドル対円相場の週次の変動率の相関係数を求め、上位10銘柄と下位10銘柄を表にまとめました。相関係数は-1から1の間をとり、数値がプラスであれば同じ方向に動く傾向があること、数値がマイナスであれば逆の方向に動く傾向があることを示します。数値の絶対値が大きいほどその傾向が強いことを意味します。

順位 相関係数 上位10銘柄
(円安メリット株)
相関係数 下位10銘柄
(円高メリット?株)
1 0.57 第一生命 HD(8750) -0.16 ペプチドリーム(4587)
2 0.56 みずほ FG(8411) -0.16 ブイ・テクノロジー(7717)
3 0.54 三井住友 FG(8316) -0.09 石川製作所(6208)
4 0.53 三菱UFJ FG(8306) -0.05 安永(7271)
5 0.52 ホンダ(7267) 0.02 OLC(4661)
6 0.51 富士フイルムHD(4901) 0.03 ブレインパッド(3655)
7 0.50 トヨタ自動車(7203) 0.04 しまむら(8227)
8 0.50 マツダ(7261) 0.05 リクルートHD(6098)
9 0.44 ルネサス(6723) 0.06 ABCマート(2670)
10 0.43 日東電工(6988) 0.06 任天堂(7974)

ちょっと意外だったのは、上位10銘柄、つまり、円安と株高に強い関係が見られる銘柄に金融株が多く含まれていることです。第一生命HDは予定利率を契約者に保証している保険の運用資産(一般勘定)に外国証券があるため、為替相場との関係性が強いのかもしれません。また、メガバンクは海外業務の為替影響が粗利益増減に影響するようです。自動車メーカーも上位に顔を出していますが、輸出企業の典型例でありイメージどおりの円安メリット株と言えるでしょう。

一方で相関係数下位10銘柄を見ますと円安メリット株と比べて内需関連が含まれるのはイメージどおりですが、注意すべき点もあります。まず、数値の絶対値が上位10銘柄に比べて低い傾向があります。この程度の水準ですと、「円高メリット株」と言うのは難しく、むしろ、「為替変動の影響を受けにくかった株」と言えそうです。また、上位10銘柄と比較すると小型の銘柄です。株価の値動きが大きく、為替変動要因よりも別の要因の方が株価に影響していたと考えられます。ちなみに「円高メリット株」のイメージに合いそうな国際石油開発帝石(1605)と米ドル対円相場の相関係数は0.32、日本航空(9201)は0.21とプラスで、「円高メリット株」とは言えなさそうです。

投資戦略を立てるなら

以上を踏まえると、「円高メリット株」を探すのはちょっと難しいのかもしれません。しかし、為替変動の影響を受けにくい株のうち、相対的に上昇トレンドにある株は投資候補に入れてもよさそうです。また、データから円高進行で下がりそうな株は見当がつきますので、上昇相場でも下落相場でも利益を狙えるeワラントならではの投資戦略として次のものが考えられます。

・為替変動の影響が相対的に小さい株のコール買い
ペプチドリーム(4587)のコール買い
ブイ・テクノロジー(7717)のコール買い
ブレインパッド(3655)のコール買い
しまむら(8227)のコール買い
ABCマート(2670)のコール買い
任天堂(7974)のコール買い
など

・円高で株価が下落すると考えられる株のプット買い
第一生命HD(8750)のプット買い
みずほFG(8411)のプット買い
三井住友FG(8316)のプット買い
三菱UFJFG(8306)のプット買い
ホンダ(7267)のプット買い
富士フィルムHD(4901)のプット買い
など

(eワラント証券 投資情報室)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。