有名な投資格言の一つに「利食い千人力」があります。株式を買い付けて評価益が生じても売らないと利益は確定しません。評価益があるときに売らないで保有を続けた結果、株価が反転して損失となってしまった、というご経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。利益確定の重要性を説く投資格言です。
その一方で、利益確定を意識するあまりに焦って早く利食い売りをしてしまい、その後の上昇分を取れなかった、というご経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。「利は大きく、損は小さく」を実践するのはなかなか難しいものです。
保有している株式を利食い売りせずに、利益を確保しつつ、上値を狙う方法があります。相場下落時に価格上昇が見込めるプット型eワラントを保有株式分だけ追加購入し、満期まで保有するという方法です。これはオプション戦略の一つ「プロテクティブ・プット」と呼ばれるものです。
プロテクティブ・プットの事例と効果
例として、ソフトバンクグループ(9984)を保有している場合に「プロテクティブ・プット」を実践する方法を紹介します。なお、株式買付に係る手数料は考慮していません。
<例>
対象株式 | ソフトバンクグループ(9984) |
株価現値 | 8,230円(2017年4月27日の前場終値) |
買付単価 | 7,800円 |
保有株数 | 100株 |
買付eワラント | ソフトバンクグループ プット 400回 |
権利行使価格 | 8,500円 |
満期日 | 2017年6月14日 |
1ワラント当たり原資産数 | 0.005 |
販売価格 | 2.60円(2017年4月27日12:14時点) |
eワラント買付数量 | 20,000ワラント(=100株÷0.005) |
買付金額 | 52,000円(=2.60円×20,000ワラント) |
保有株式100株に該当するeワラントの数量は「1ワラント当たり原資産数」を見て計算します。「1ワラント当たり原資産数」が0.005というのは1ワラントが0.005株に該当しますよ、ということなので100株に該当するワラント数をXとすると、1ワラント:0.005株=Xワラント:100株という比例の関係から、X=100株÷0.005株でX=20,000となります。
この事例では評価益が43,000円発生しています。選択したプット型eワラントは権利行使価格が8,500円ですので、もし2017年6月14日の株価が8,230円で変わらなかった場合のeワラントの満期清算単価は1.35円=(8,500円-8,230円)×0.005となり、20,000ワラント保有で27,000円(=1.35円×20,000ワラント)となります。
eワラントの買付金額が52,000円ですので27,000円の満期受取ですと、25,000円の損失となりますが43,000円の株式評価益と合計すると18,000円の評価益となります。
もう少し詳しく見てみましょう。株価が変動した場合の株式の評価損益とeワラントの満期決済損益の関係を図表にまとめました。
図表にあるように株価が権利行使価格の8,500円以下となった場合、株式の評価損益とeワラントの満期決済損益の合計は18,000円で変わらず、利益を確保できていることが分かります。一方で株価が上昇した場合は株価上昇に伴って評価益も増えています。
これが最大損失が限定されているeワラントの特徴を活かした「プロテクティブ・プット」の効果です。
eワラントを活用することで投資の選択肢が増える
株式投資において「プロテクティブ・プット」も考えることで、投資の選択肢が増えることが期待されます。前述の事例において次の選択肢がありました。
①今この時点で43,000円で株式の利益を確定させる。
②52,000円の「プロテクティブ・プット」で18,000円の評価益を確保し、上値を狙う。
③株式の利益確定売りも「プロテクティブ・プット」も行わず、継続保有を続ける。
それぞれのメリットとデメリットは次の通りです。
①43,000円の利益を確保できるが、上値は狙えない。
②18,000円の利益を確保でき、上値も狙えるが、今確保できる利益は①より減少する。
③追加費用なしで上値を狙えるが、損失が発生する可能性もある。
株式投資だけを考えると①か③しか選択肢はありませんでしたが、「株式+eワラント」で中間の②の選択肢が新たに加わりました。
eワラントはオプションを有価証券にしたものであり、eワラントの経済効果はオプション取引と実質的に同じです。オプション取引との違いの一つとして、eワラントは個別株を対象とする銘柄が多く存在し、マーケットメイク方式により個別株を対象とした銘柄でも流動性が確保されていることです。
eワラントを活用することで「プロテクティブ・プット」など、投資の選択肢が増えるでしょう。
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