相場格言はもう古い?

『麦わら帽子は冬に買え』、『人の行く裏に道あり花の山』などの相場格言をご存知でしょうか。株式投資で勝つためには他人と同じことをやっていては大儲けできないという意味の相場格言の代表格ですが、時は移って、ネット取引が主流の現在になると、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉が流行り、『当たり屋に付け』とばかりに「上がるから買う、買うから上がる」相場が幾度も見受けられます。最近ではあまり聞かれなくなった相場格言について、今回は筆者の経験も織り交ぜて、取り上げてみたいと思います。


50年前の小冊子が今も

そもそも相場格言には、どのようなものがあるのでしょう。日本証券業協会のホームページには相場格言に関するコーナーがあります。投資についての基礎知識などを学ぶことができる「投資の時間」の中に、旧証券広報センターが1971年に発行した小冊子『格言は生きている』の内容を転載したものが掲載されています。私も証券業界に営業マンとして身を投じていたころには、ご年配のお客様や先輩営業マンから相場格言を教わり、営業トークの中でもよく使っていました。株式投資において、最も冷静でいられるのは株式を「購入する前」です。相場環境や材料などをよく吟味して銘柄を決めます。そして、「いくらで買って、いくらで売ろう」という算段を立てて投資に臨みます。買ってから目論見通りに値上がりしてくると、ついつい気が大きくなり、「あと少し、あと少し」とだんだん欲が出てきます。しかし、そうして爪を伸ばして売り損なうと、当初考えていた売値より高くても売れない『高値覚え』で、売り時を逸することがありました。『もうはまだなり、まだはもうなり』、『天井三日、底百日』など売り時の難しさを表す格言は多く、我々もよく使っていました。

また、『見切り千両』は、損は小さいうちに確定することで、大損を避けるのと同じ価値があるという趣旨ですが、これも相場ではよくあることでした。今はロスカットルールがありますから、大損はしなくなったかもしれません。一方、格言ではなさそうですが、小さな儲けでも損をするよりマシという意味で「利食い千人力」という言葉もよく使っていました。相場は需給状況によるところも非常に大きく、『閑散に売りなし』、『保ち合い放れに付け』などは、相場が煮詰まると、その後大きく動くことを示唆している言葉です。さらに、『株を買うより時を買え』という格言もあります。一言でいえばタイミングが大事だということですが、冒頭の『麦わら帽子は冬に買え』のように、人気になる前に仕込むことの大切さや、ショック安などに向かう姿勢の重要性を説いています。


相場は相場に聞け

さて、1999年4月30日に東証立会場が最後の日を迎え、システム取引が主力になった株式市場は、個人投資家の売買比率が低下し、外国人投資家の比率が上昇していきました。機械的な取引が主流となっていく中で、格言を口にする個人投資家が少なくなってきているのも事実です。しかし、一方で、機関投資家が扱う主力銘柄以外においては、依然として投資家心理が大きく影響し、株価を左右するケースも見受けられます。『相場は相場に聞け』は最近でも、時々耳にする格言です。とかくメディアによる情報の発信速度も上昇し、誰でもSNSを通じて意見や考えを自由に表明できる、雑音の多い現代では、それらに大きく惑わされ、相場を見失うことが間々あります。あくまで、相場の行方は相場だけが知っているものと割り切ることが大切です。そして最後に触れたいのが『休むも相場』。勝ち続ける、または負け続けてしまういずれの局面でも、売り買いに夢中になっていると、周りが見えなくなってしまうことがあります。常に、適度な余力(精神的、肉体的、資金的にも)を持って、周りを見渡す余裕が必要なのかもしれません。


(eワラント証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。