長期保有株の下落に保険を

2月初週の日本株市場は、春節(旧正月)の連休明けの中国株の急落に伴って大幅安で始まったものの、中国当局による資金供給や経済刺激策への期待から反発をみせ、週を通じては大幅な上昇となりました。新型肺炎の感染者数は増加の一途を辿っており、収束の兆しはまだ見えていませんが、株式市場では新型肺炎の影響は既に織り込んだとの見方が強いようです。

とはいえ、相場のボラティリティ(変動性)は高まっており、年初の中東不安を受けた下落など突如として相場が崩れることも多くなっています。パニック相場での下落に備えるのであれば、保有する株式等を売却することが考えられますが、プット型eワラントを「保有株式が下落した場合の保険」として活用することで株式等を手放すことなく最大損失を限定させる方法(プロテクティブ・プット)もあります。


長期保有

今回は、減配を行わない累進配当株として長期保有されている方も多いと思われる「三菱商事(8058)」を事例として紹介します。図1は直近半年の株価推移です。5大商社のなかでもトップの規模を誇り、高成長を続ける同社の成長に期待されている方も多いでしょう。しかし、相場全体に対する下落圧力が強まる局面では、短期的な下落が不安と思うこともあるかと思います。このようなとき、相場下落時に価格上昇が見込めるプット型eワラントを併せ持つことで、最大損失を限定させる保険のように活用することができるのです。


実際にプット型eワラントを保険として使うには?

前提として、三菱商事株を株価2,800円で買い付け、1,000株保有しているものとします。
<前提(2020年2月12日15:00時点)>
対象株式:三菱商事(8058)
株価:2,889円
買付単価:2,800円
保有数量:1,000株

同社を対象とするプット型eワラントは、3月11日満期の権利行使価格2,600円と4月8日満期の権利行使価格2,750円の2銘柄があります(2020年2月12日時点)。プット型eワラントは、満期日において相場(三菱商事プットの場合は三菱商事の株価)が権利行使価格を下回った分だけ満期決済金が発生します。この満期決済金が満期日において、株価が権利行使価格を下回る部分の保険となります。

例:
2020年3月11日満期日の権利行使価格2,600円のプット型eワラント
=2020年3月11日において、株価が2,600円を下回る部分の保険

満期日までの期間が長いほど、プット型eワラントの場合は権利行使価格が高いほど、eワラントの価格も高くなります。保険料はなるべく安くすませたいところですので、今回は約1カ月後である2020年3月11日満期の権利行使価格2,600円のプット型eワラントを保険として用いる例を紹介します。

<プット型eワラントの概要(2020年2月12日15:00時点)>
販売価格(お客様が買付できる単価):0.40円 ※1
満期日:2020年3月11日
権利行使価格:2,600円
1ワラント当たり原資産数(株数):0.02 ※2
対象株式1,000株に対して必要な買付数量:50,000ワラント※3
買付金額:20,000円
※1 eワラントの価格(気配値)は市場動向によって変化します。
※2 1ワラントが何株に該当するかの係数です。予め定められています。
※3 必要な買付数量=株式保有数量(1,000)÷1ワラント当たり原資産数(0.02)

保有株の全てに保険をかけるのであれば上記の式にあるように50,000ワラントを買うことになります。買付金額の20,000円が支払額となります。eワラントの満期日である2020年3月11日はこの保険の満期日とも言え、株価水準ごとの損益と保険によるヘッジ効果は表1のとおりとなります。


満期日の株価(始値)が2,600円以上であった場合、合計損益(C)はeワラントの買付金額分(20,000円)だけ目減りすることになりますが、株価が2,600円を下回るほどeワラントの満期決済金額が大きくなります。例えば株価が2,400円まで下落するケースでは、株式を保有していれば400,000円の評価損(含み損)が発生しますが、eワラントで180,000円の利益が出るので合計損益(C)は220,000円の損失にとどまります。

なお、表1では現物株式の購入に必要な手数料は考慮されておりません。eワラントの取引手数料は無料ですが、お客様の買値と売値には売買価格差があります。表1では当該売買価格差は考慮されています。

このように、プット型eワラントを下落に対する保険として活用し、現物株を手放すことなく含み益や最大損失を確定させる手法を「プロテクティブ・プット」と言います。満期日以前であればeワラントの売買は可能ですので、上昇基調に転じるなどして保険が必要なくなれば満期前に売却してプット型eワラントの損益を確定させてしまうのも選択肢の一つとなります。

今回の例では、相場全体の下落を想定していますが、決算発表などのイベントで株価の下落が予想される際にもプロテクティブ・プットは有効です。また、最近では株主優待の条件に一定期間以上の保有を求める企業も増えています。株を手放すつもりはないけれど、株価が下押し圧力に耐えられそうにないな、と思った時などにはプロテクティブ・プットを検討してみてはいかがでしょうか。


(eワラント証券 投資情報室)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。